内容説明
秀吉はん、お耳を貸していただけまっか。堺の町に秀吉を愚弄する落首(狂歌)が放たれた。犯人は鞘師の曽呂利新左衛門。討ち首になるはずだった曽呂利だが、持ち前の才覚で死罪を逃れた挙句、口八丁手八丁で秀吉に取り入り、幕下の一員に収まってしまう。天才的な頓知と人心掌握術で気味な存在感を増す鮟鱇顔の醜男は、大坂城を混乱に陥れ――この奇妙な輩の真意とは一体!? 新感覚歴史エンタテインメント!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
331
表紙のイラストが目にとまって、なんとなく購入。笑うせぇるすまんと一休さんを、足して二で割ったような、曽呂利の人物像が面白い。第四話あたりから、物語が転がりだしていくが、二話と三話あたりの不気味さが個人的には好き。あのまま最後まで通してみて欲しかった。知らない人物であったが、おそらく上手に史実や逸話を絡めて網羅してあるのだろう。構成が上手だと感じたが、秀次切腹の理由づけだけ少し苦しく見える。その他の頓着話は、まぁ一休さんみたいなものだから、と思えば、そんなに浮いて感じない。さっと読めてまずまずの満足感。2019/03/16
mapion
286
落語の初めとも謂われる曽呂利新左衛門は、頓智の効いた話術を持ち、御伽衆として豊臣秀吉に仕える。秀吉の傍に仕える蜂須賀小六、茶の湯で大家の千宗易(利休)、義賊の大泥棒石川五右衛門、殺生関白と言われた豊臣秀次、戦で名を上げた秀吉子飼いの武将たちから疎まれた石田三成などは安楽な死に方をしていない。実は曽呂利が関わっているらしい。曽呂利は元鞘師で、今は御伽衆として頓話で秀吉を楽しませるだけの男。いったい何をどうしたかったのか、謎は最後に明かされる。構造としては、蜂須賀小六以下の人物を描くために曽呂利を置いた感じ。2025/11/23
しんごろ
164
噺家の始祖と呼ばれる曽呂利新左衛門の話。実在してるのかも定かでなく諸説ありますが、いろいろな逸話があるのは事実です。そんな曽呂利が、名前の通り相手の懐に、そろりそろりと忍びより、豊臣秀吉、石田三成、千利休、はたまた石川五右衛門などを、頓智のきいた話術だけで貶める。一言で片づけるなら、“歴史のすき間に曽呂利あり!”という感じかな。戦乱の世を生き抜く姿、堺の町人を救う一生懸命さが伝わり面白かったです。それにしても最近の歴史小説、時代小説の作家さん達の創造性は凄いですね。2020/04/04
ちょろこ
122
魔性の舌、の一冊。秀吉を手玉に取ったこの曽呂利という人物に魅せられた。魔性の舌を武器に近づき、何人もの心をかき乱し行動を操る…まるでこちらまでそろりそろりと曽呂利に心に入りこまれる感覚だった。なぜに秀吉に取り入り、謀臣達を追い落としていったのか…彼の胸のうちが明かされた時には思わずほぉっと感嘆の吐息。耳打ちと見せかけたのが実は…には笑いと感心の言葉しか出ない。数々の史実の合間に曽呂利を上手く滑り込ませ、魔性の舌で謎めき見事に読ませる歴史エンタメ小説は彼の思いが凝縮され、虚しさの風が吹く終章までお見事。2019/07/09
岡本
118
秀吉晩年の迷走は堺の陰謀で獅子身中の虫が本作の主人公・曽呂利新左衛門。一見すると目的の見えない曽呂利の行動が明らかになる最終章は実に面白い。歴史小説でミステリーを読んでいるかの様。様々な人物が其々の思惑で豊臣家を蝕んでいく。読み応えのある一冊。2019/05/01
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