家族はなぜ介護してしまうのか――認知症の社会学

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家族はなぜ介護してしまうのか――認知症の社会学

  • 著者名:木下衆【著】
  • 価格 ¥2,530(本体¥2,300)
  • 世界思想社(2019/03発売)
  • ポイント 23pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784790717263

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内容説明

介護を頑張りすぎることへの問題提起――患者の人生や性格に合わせた介護が求められる現在の認知症。患者をよく知るからこそ、家族は悩み、憤り、反省する。認知症を理解し、介護へと導かれ、患者との関係を再構築するまでの家族の営みを丹念に描く。

――はじめにより
 彼ら家族たちは介護保険サービスを利用しながらも、何らかの形で介護を担っていた。彼らは例えば、日常的にケアマネジャーと介護の方針についてすり合わせ、患者が通う通所介護施設(デイサービス)を訪問して日々の様子を観察し、サービス内容に意見を申し立てていた。……
 これから事例として紹介するように、彼らは介護の中で、悩むこと、憤ることを繰り返す。頼れるプロがいながらも、そして「介護はプロに」と思いながらも、彼ら家族は介護に、いわば巻き込まれていってしまう。……
 私が注目するのは、「認知症」という病だ。そこに、「家族はなぜ介護してしまうのか」という謎を巡る、重要な論点が隠されている。
 鍵となるのが、患者個々人の「その人らしさ(personhood)」に関する知識だ。患者本人を介護の中心に据え、多様な専門職がかかわる介護の体制がつくられるからこそ、介護家族の知識が頼られ、介護にかかわらざるを得なくなってしまう。
 ……そんな彼らが、何を目指し、何に苦悩しながら介護をしていたのか。社会学の立場から、きちんと分析をしておきたい。

目次

はじめに
序章 新しい介護、新しい問題
1 認知症とは何か
2 認知症ケアの何が変わったのか
3 医療社会学の視点
4 介護が抱える問題と社会学が抱える問題
5 患者の人生
1章 認知症の概念分析へ――本書が問うもの
1 家族はなぜ介護を担うのか
2 家族はどのような規範を身に着けていくのか
3 認知症の概念分析
4 フィールドとデータ
2章 認知症に気づく――何が、なぜ「おかしい」のか
1 気づきへの注目
2 気づきのプロセスを問う
3 Kとその家族
4 いかにして気づいたのか
5 なぜ気づけなかったのか
6 争点として立ち現れる、相手の人生
3章 患者にはたらきかける――「より良い介護」を目指して
1 より良い介護の基準はどこにあるのか
2 反省する家族への注目
3 Lとその家族
4 はたらきかけの基準
5 患者本人による人生の意味づけ
6 家族による人生の再構築
7 専門的知識が求める日常的知識
4章 悩みを抱える/相談する――規範を再構築する
1 家族会で相談する
2 認知症概念に基づく責任の帰属
3 認知症概念がもたらす規範
4 認知症患者のプロトタイプ
5 悩みのあり方の変化
6 「社会的なもの」としての家族会メンバーの悩み
5章 他の介護者に憤る――介護家族による「特権的知識のクレイム」
1 患者の「本当の姿」をめぐる対立・葛藤
2 専門職に対して憤るとき
3 家族に対して憤るとき
4 新しい認知症ケアがもたらす対立・葛藤
終章 新しい認知症ケア時代を生きる――悩みが映し出すもの
1 新しい認知症ケア時代だからこそ介護を担う家族
2 介護家族が身に着けていく規範
3 人生それ自体の再構築
4 介護家族の悩みから見えるもの
5 介護する人、される人へ
コラム
1 「私らがずっとやってきたことだよね」
2 気づけなかった後悔を受け止める
3 「一人ひとりの思いと力」を見つけること
4 悩みを聞く場の尊さ
5 ただの「認知症ケア」を目指して

おわりに
参考文献
人名索引
事項索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キク

52
「なぜ家族は介護してしまうのか」を、賛美するでも非難するでもなく、その構造的要因を考察する。「介護の理想は上がっている」という。社会インフラや介護専門職のレベルも上がっている。でも「個人を尊重する介護」を目指し、被介護者の人生や個性を1番理解している家族は、介護専門職では担えない役割を自ら担っていき疲労しているという。著者は「介護の問題はあなた個人でなんとかできるものではない。他の誰もがなんとも出来ない問題でもある。その誰にもなんともできないものを、それでも皆で支えていくことが介護だ」という。深いな、、、2021/11/12

Olive

7
現代の認知症介護とは、患者の人生が透けて見えるようなかかわりあいのなかから進めていくものとなった。その介護経験は、患者を中心としたすべてのアクターを巻き込んだ「家族の新しい人生」を構築していくことである。 患者の埋もれた力は周囲の働きかけで発揮できる。その働きかけは時に家族は「私しか知らない」という表現をもってされる。その視座は、良い介護をめぐって家族の対立が起こる点、介護を抱え込むということ、また、自分しか知らないという設定は患者本人への力を見出す点において新しい認知症ケアの潮流と対立する。2022/06/06

ゆうすけ

5
タイトルからイメージした内容とは若干違っていました。社会構成主義的な内容です。参与観察のエピソードはとても面白い。介護者と専門職と患者を巡る関係性を描いた感じでしょうか。「意識が高い」介護者がいかに「良い」介護をするのか。答えのない問いかけです。著者の書きぶりがややドライに感じられるのは福祉よりも社会学の文脈で分析しているからでしょうか。家族社会学と言う分野があるのは知らなかった。僕よりも年下の著者がなぜこのような分野の研究をするようになったのか個人的に興味を持った。医学書院から是非次回作を期待します。2021/01/16

すずなり

0
89歳の母が要介護2となったタイミングで新聞に掲載されていたから買ってみた。私の本音は、自分の生活を犠牲にして介護したくはない、といったところ。なるべく介護サービスを利用して乗り切りたい。この本にその解決策を求めたが、登場する介護者がみな優秀過ぎて参考にならない。要介護者の「その人らしさ」を大切にする、というのはわかったが、介護する側の「その人らしさ」をどうやって担保すればいいのか。生活保護申請における考え方と同じようにならないものか。家族はなぜ介護しなくてはならないのか。2022/04/27

チャーリイ

0
感想→ https://charlieinthefog.com/wlr-20200525/2020/05/25

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