内容説明
介護を頑張りすぎることへの問題提起――患者の人生や性格に合わせた介護が求められる現在の認知症。患者をよく知るからこそ、家族は悩み、憤り、反省する。認知症を理解し、介護へと導かれ、患者との関係を再構築するまでの家族の営みを丹念に描く。
――はじめにより
彼ら家族たちは介護保険サービスを利用しながらも、何らかの形で介護を担っていた。彼らは例えば、日常的にケアマネジャーと介護の方針についてすり合わせ、患者が通う通所介護施設(デイサービス)を訪問して日々の様子を観察し、サービス内容に意見を申し立てていた。……
これから事例として紹介するように、彼らは介護の中で、悩むこと、憤ることを繰り返す。頼れるプロがいながらも、そして「介護はプロに」と思いながらも、彼ら家族は介護に、いわば巻き込まれていってしまう。……
私が注目するのは、「認知症」という病だ。そこに、「家族はなぜ介護してしまうのか」という謎を巡る、重要な論点が隠されている。
鍵となるのが、患者個々人の「その人らしさ(personhood)」に関する知識だ。患者本人を介護の中心に据え、多様な専門職がかかわる介護の体制がつくられるからこそ、介護家族の知識が頼られ、介護にかかわらざるを得なくなってしまう。
……そんな彼らが、何を目指し、何に苦悩しながら介護をしていたのか。社会学の立場から、きちんと分析をしておきたい。
目次
はじめに
序章 新しい介護、新しい問題
1 認知症とは何か
2 認知症ケアの何が変わったのか
3 医療社会学の視点
4 介護が抱える問題と社会学が抱える問題
5 患者の人生
1章 認知症の概念分析へ――本書が問うもの
1 家族はなぜ介護を担うのか
2 家族はどのような規範を身に着けていくのか
3 認知症の概念分析
4 フィールドとデータ
2章 認知症に気づく――何が、なぜ「おかしい」のか
1 気づきへの注目
2 気づきのプロセスを問う
3 Kとその家族
4 いかにして気づいたのか
5 なぜ気づけなかったのか
6 争点として立ち現れる、相手の人生
3章 患者にはたらきかける――「より良い介護」を目指して
1 より良い介護の基準はどこにあるのか
2 反省する家族への注目
3 Lとその家族
4 はたらきかけの基準
5 患者本人による人生の意味づけ
6 家族による人生の再構築
7 専門的知識が求める日常的知識
4章 悩みを抱える/相談する――規範を再構築する
1 家族会で相談する
2 認知症概念に基づく責任の帰属
3 認知症概念がもたらす規範
4 認知症患者のプロトタイプ
5 悩みのあり方の変化
6 「社会的なもの」としての家族会メンバーの悩み
5章 他の介護者に憤る――介護家族による「特権的知識のクレイム」
1 患者の「本当の姿」をめぐる対立・葛藤
2 専門職に対して憤るとき
3 家族に対して憤るとき
4 新しい認知症ケアがもたらす対立・葛藤
終章 新しい認知症ケア時代を生きる――悩みが映し出すもの
1 新しい認知症ケア時代だからこそ介護を担う家族
2 介護家族が身に着けていく規範
3 人生それ自体の再構築
4 介護家族の悩みから見えるもの
5 介護する人、される人へ
コラム
1 「私らがずっとやってきたことだよね」
2 気づけなかった後悔を受け止める
3 「一人ひとりの思いと力」を見つけること
4 悩みを聞く場の尊さ
5 ただの「認知症ケア」を目指して
注
おわりに
参考文献
人名索引
事項索引
感想・レビュー
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