内容説明
「トム」――夜中にかかってきた一本の電話、それは二十二年前に死んだはずの息子からのものだった。「レイン」――亡くなった著名な作家の遺作には、母国語での出版を禁じ、翻訳出版のみを許可するという奇妙な条件が付されていた。「親愛なるアグネスへ」――夫の葬式で久しぶりに会ったかつての親友、二人の交わす書簡はやがて……。デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返しを兼ね備えた、全5編の傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
123
中短編5つ。最初の『トム』だんだんに分かってくる全容と追い詰められていく焦燥感。ラストの終わり方に最初はついていけず、それぞれの時期を読み直した。カウンセラーの存在が気になる。彼女はおかしい。『レイン』このなかで1番長く、気を持たせるだけ持たせ、遅々とした進み方だが、本を置く気になれずに最後を見届けた。『アグネス』陰湿さを描きたかったのだろうけど、展開が単純すぎないかな。あとの2つは、作者のパターンに慣れてしまい、楽しめなかった。 読む順が反対だったら、好きな話は入れ変わったかもしれない。2019/06/07
aquamarine
89
5つの短編集。どれも、途中で何かが意図的に隠されていることに気づくのですが、簡単には見せてもらえません。後半ぱっと目に見える景色が変わったりざざっと怖気だったり…。それらの原因となっているのは誰にでも持ち得るほんの小さな悪意。淡々とつづられる文章がぐいぐいと私を引きずりました。好みはラスト一行まで気が配られた、死んだ息子がやってくる「トム」。女性二人の書簡による駆け引きが見事な「親愛なるアグネスへ」。4編が三つの映画になるそうです。背景まで綺麗に目に浮かぶ文章でしたので、映画化も納得です。2019/03/25
キムチ
55
4,1の編が入っている・・というのは最後の「きらり一瞬」の作品があるから。まさに3秒で読める内容ながら、言わんとする実存的考えのエッセンス。とは言え、実存って何ナンスかね。語っている人皆が解っているとは凄いっすね。当作品は筆者の脳味噌が実存の細胞で満ち満ちている感100%。あほな私でも感じる。「トム」「レイン」「サマリア・・」何れも「過去」が今の私に執拗に、蔦の如く絡んでがんじ絡めにしてしまう。で、吸い取られるかと思いきや・・結末が面白い。「アグネス・・」は少し異なり女の過去のメンタル的くんずほぐれつ。2019/11/02
あさうみ
50
殺人に縁のない、ごく普通の人間が“ ちょっと魔が差す”悪意や欲、悪巧みにより背筋がぞくりとするようなとんでもない結末になる短編集。思わず「なんと!」と叫んだ。人の心を踏みにじるのは良くない!お気に入りは「親愛なるアグネスへ」!女友達2人の懐かしの友情が思わぬ方向へ。「そしてミランダを殺す」が好きな方は必読では!?2019/02/16
azukinako
37
読みにくいのに”読ませる”。結局引きずり込まれる。私自身にもそこに惹かれるいやぁなものがあるってことだよね、ということを知らされた感。2019/05/26
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