内容説明
深夜、隣人の不審な行動を目撃した少年の恐怖の体験を、サスペンス豊かに描いた、作者得意の子供を主人公にした表題作「穴」。コートを食堂で取り違えた視覚障害者が、特有の鋭い感受性で名探偵ぶりを発揮する「明るい闇」。ほかに「山のふところに」「幽霊と月夜」「誘拐者たち」「うさぎと豚と人間と」の6編を収録。日常の中の殺意を透明な文体、独得のユーモアの中に鮮かに浮かびあがらせた、傑作ミステリー集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たか
49
【再読】仁木悦子はもともと童話作家だったこともあって、子供を主人公にした作品を書くのが上手い。 深夜、隣人の不審な行動を目撃した少年の恐怖の体験を、サスペンス豊かに描いた、子供を主人公にした『穴』など6つの短編が収録されている。 童話作家独特の軽やかだけど芯の強い語りの巧さがこの作品の中にも現れている。 透明な文体と独得のユーモアが心地良い。C評価2022/04/30
Yu。
30
子供‥老人‥盲目‥精薄者‥と、立場の弱い者達の盲点とまた更にその盲点を突いた6つのヒューマンサスペンスミステリ。。。おもしろい!!とその一言で片付けるのは内容的に憚れますが、どれもがとっても良かった。なかでも、ある人物の何気ない日常から生まれる殺人事件とその背景から覗けるやるせない人生ドラマの重みは決して過去の事でも他人事でもない…「山のふところに」。現場は養護施設でまた入所者それぞれの特徴を活かした内容が描かれる事件だけあってとても複雑な気持ちに駆られるのだが…「うさぎと豚と人間と」 は特にお気に入り。2016/08/21
kinshirinshi
7
子供が語り手の表題作から始まる短編集。仁木さんの描く子供はみんな利口で可愛いのだけれど、どれも似たような話になってしまうのが玉に瑕だ。しかしその後は、盲目の主人公が晴眼者には真似できない方法で事件を解決したり、短編なのに次々人が死ぬ連続殺人事件が起こったり、福祉施設で障害児を隠れ蓑にした犯罪が起こったり、と、意表をついた話が多く、マンネリ感はなかった。2023/01/30
Narumi
6
短編集。三編目の「山のふところに」がえもいわれぬ悲しみがこみ上げてくる話で、印象に残りました。発表は1968年のようで、この主人公に共感する人も多かったのではないかと想像されます。「裏日本観光開発」というあけすけな社名にちょっと笑ってしまいましたけど。巻末の「うさぎと豚と人間と」は養護学校を舞台にしていて、今ではなかなか書かれない内容ではないかと思うのですが、それがいいことかどうかはわかりません。2019/03/18
はちがみっつ
3
短編集。 いとこ同士の殺人とか。なかなかあっさり終わってしまい、逆にびっくりした、これ長編で読みたい。 短編全てにおいてカラーがバラバラ、見事。2021/08/28