内容説明
大学の仲間たちと自主制作映画を撮る七沢。ある日、イタリアの蚤の市で買ったナイフを使っているとガボーニと名乗る霊が現れ、「このナイフで殺した命は、16時32分に生き返る」と言い、姿を消した。半信半疑の七沢だったが、ナイフを使って殺した蠅が、翌日の16時32分に蘇生するのを目の当たりにする。七沢はナイフの力を使い、緻密な“殺人”を繰り返すが……。予測不能な結末が待ち受ける、ノワール・ミステリの新境地!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
63
読み終えて茫然の犯罪ミステリ。いやあ面白い。まさに期待を裏切らない作品だった。「このナイフで殺した命は16時32分に生き返る」という特異な設定、その確実性を活かし切ったトリック、そして妙味のある物語を堪能した。殺人とは?、殺人の悪の本質は何かいう理論と倫理的な感情とのせめぎ合いを具現化したような寓話的ストーリー。殺人を犯す場面のゾクッとする心理描写がどぎつい。美しくはないのに美しいという警視のセリフやガボーニの幻想的な場面が印象深かった。これは犯罪ミステリなのか。最後の仕掛けが作者からの回答なのだろうか。2019/02/28
さっこ
43
初読みの作家さん。表題から想像していた内容とはまったく違っていました。ヨーロッパの殺人鬼の魂みたいのが宿ったナイフ。殺しても何時間後かに何事もなかったように生き返る。そういう意味なのか…。映画づくりのためにそのナイフを使用するのですが、結果、殺していないし事件も立件できない。どのような結末になるのか想像つきませんでした。これは好みの分かれる作品だと思います。個人的には登場人物みんなに魅力を感じることができなくて結末だけが知りたくて読み進めた感じです。2019/04/16
カノコ
40
そのナイフで殺した命は、必ず16時32分に生き返る。映画監督志望の七沢はそのナイフを使って作品のために命を奪っていくが…。著者らしい、特殊アイテムを使ったブラックユーモアたっぷりの作品。七沢も、彼も逮捕したい警官の小曾根も、いい感じの頭のおかしさ。怖い。途中の「必ず生き返るならばその行為は殺人か?」という議論も中々興味深かった。しかし何よりも特筆すべきは、趣味の悪さ全開のこのオチ!思わず「うわあ…」と声を上げてしまうほど嫌らしい最後の展開が、個人的に大好きすぎる。ミステリとしては控えめだが、楽しかった。2019/10/24
はな
36
そのナイフでは殺せない。そのナイフを使ったとしても、特定の時刻になると蘇生するからである。映画監督を目指す大学生の七沢と、役者として参加している友人の稲木戸と室伏。ナイフの特性を知った七沢はそれを利用してよりリアルな映像を撮ろうとするが……。七沢はもちろん、自虐かまってちゃんな室伏と異常なまでにヒステリックになる小曽根警部の女性陣もみんな面倒くさい。悪趣味な展開だけど、特殊設定がうまく活かされていておもしろかった。最後どうなるんだろうと思ってたら、そうくるのかー!!ブラックなラストにちょっぴりにやり。2019/11/30
horihori【レビューがたまって追っつかない】
29
「このナイフで殺した命は、16時32分に生き返る」綿密な“殺人"を繰り返し、それを撮影する若き映画監督と、暴走捜査で孤立する女性警部。壊れているのはどちらなのか。2020/01/22