新宿の猫

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新宿の猫

  • ISBN:9784591154625

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内容説明

構成作家の卵である「ボク」は明日の見えない闇の中でもがいていた。そんなある夜、ぶらりと入った新宿の小さな居酒屋で、野良猫をかわいがる「夢ちゃん」という女性店員に出会う。客には不愛想だが不思議な優しさを秘めた夢ちゃんに「ボク」はしだいに惹かれていく。ふたりは猫についての秘密を分け合い、大切な約束をするのだが――。生きづらさを抱えた命が伝え合う、名もなき星のような物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鉄之助

369
『あん』以来のドリアン本。「期待しないように。期待しないように。」と読み進めた。これまで過大な期待から、肩透かしを喰らった本が、多々あったから。しかし、主人公の山ちゃんが、「四半世紀ぶりに」居酒屋の女性店員・夢ちゃんと再会する最終盤あたりから、もうダメ。何と寂しくも、美しい「人間」という生き物。『ピンザの島』も『線量計と奥の細道』も、無性に読みたくなってしまった。恐るべし、ドリアン本! → 続く2023/03/06

starbro

222
新宿&猫ということで気になって読みました。ドリアン助川、初読です。私小説的新宿ゴールデン街猫青春譚、先日読んだ馳 星周の『ゴールデン街コーリング』に続いて好いにゃぁ(=^・^=) 実際の『猫の家族図』も見てみたい。2019/03/16

とん大西

125
「令和」発表以来、ますますセピアっぽくなってきた感がある「平成」。その平成がまだ原色だった頃の新宿、ボクと夢ちゃんと猫たちの少し儚くて寂しげで、でも何かを満たそうとして日々を積み重ねる青春の物語。ゴールデン街のオンボロ居酒屋、青二才の構成作家、謎めいた看板娘。ありそうな設定ですが、若さゆえの影もあってちょいとやさぐれ気味なのがいいです。ノスタルジーと言ってしまえばそれまでですが、セピア色の向こうに色彩が蘇る時の感動は20代でも40代でもそんなに差はないのかもしれません。優しいラストが静かに沁みてきます。2019/04/11

❁かな❁

124
ドリアン助川さん初読み。昭和の香りが色濃く残る新宿ゴールデン街。構成作家の卵の山ちゃんは新宿の小さな居酒屋「花梨花」で勤めている女性店員の夢ちゃんと出逢う。そこに集う個性的な人々、猫の家族図の猫ちゃん達、お仕事のことなど淡々と語られていく。焼きピーマンの表現がすごく美味しそう。本当に少しずつ距離が縮まっていく2人。青白い光を放ち浮かぶ月を2人で眺めながら過ごした時間は大切な秘密の時間。後半のエピソードが辛い。ラストは切ないけど優しく温かい。数回泣いてしまった。巻末に実際の猫の家族図あり。味わい深い作品。2019/06/04

しいたけ

121
バブルに沸き立つ社会の喧騒のなか、迷い猫のようなふたり。少年からようやく一歩、少女からほんの一歩、踏みだしたような拙いふたり。心の傷を、やるせない毎日を、見つけ出せない何かを、詩にかえて紡ぎ、思いを交差させていく。誰か一人だけに伝わればそれでいい、きらりと光る言葉。誰も知らない、月の下の恋。ひっそりと咲く花の儚さ。「ピーマンだって夢を見ると思います。だれも知らない部屋で」。胸が締めつけられたけれど、ふたりの明日を思えば、涙を落としてはいけないと思った。2019/02/25

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