内容説明
敗戦で失職した元海軍大佐の父。時代に背を向け不器用に生きた父と家族の「戦後」を、激情を内に秘めた簡潔な表現で描いた「未成年」(「父と子の連作」の一)。幼年期の記憶のヴェールに揺曳する一情景を、繊細な筆致で甦らせる「桃」。阿部文学の通奏低音である湘南の大自然と朽ちていく人の家を対比、早過ぎた晩年の心境を刻む「水にうつる雲」。澄明な文体と深いユーモアで人生の真実を描いた、短篇の名手の名篇10篇を精選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
fseigojp
16
ふくろぐも 昔のいじめっ子が怪しげなハンカチ押し売り営業マンとなって戦後まもないころ 通勤帰りの電車でであう かたくなな拒否の姿勢を察して別れ際 彼のはなつ一言 妙に心にのこる短編 やはり名手か2015/08/27
shimuratakeda
3
中学の頃だと思うんだけど教科書に載っていた短編がなぜか頭に残ってて、でもなかなか本屋で売ってなくて読めなかった作家代表。電子のおかげでようやく読めましたわい。やっぱりおれ、好きだなってことがよくわかった。内向的でクサクサしてて何も起きないところがしっくりくるぜ。2023/06/16
sk
3
簡潔な文体だが妙に生々しくエロティックである。2020/11/25
S‐tora
2
◎ 普段とんがった小説を読む事が多いので、こういう日常の一場面を静かに切り取ったような小説は新鮮だった。2016/10/29
あにこ
1
『おふくろ』が一番良かった。巧いな、ととにかく感心した。難解な言い回しや抽象的描写で逃げることもなく、淡々と世界を描き、そこに自己をも没入させている。それでいて薄っぺらな印象を抱かせない。こういう小説が好ましい。 しかし残りの作品の多くは随想的・私小説的な性格が強く、少し飽き飽きした。歳をとると作家はどうもこういった形態をとりたがる。世界に向けていた眼が次第に自分に向いてくるからなのか。それとも遠くを見渡すことすら億劫になるからなのか。2011/09/10
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