内容説明
明治三陸地震のあと、港町・仙河海で、正妻の子である兄とそりが合わず、鬱屈を粗暴な振る舞いで晴らしていた甚兵衛。事故で沖買船を失うも、北洋でのラッコ・オットセイ猟のことを知り、すべてを賭ける。東北から遙か北の海に繰り出した明治の男の覚悟と男気を描く。著者のライフワーク「仙河海サーガ」、最初の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーみーよー
27
仙河海シリーズ。明治から昭和にかけて主人公甚兵衛の半生を描く。時代が違うことや、ラッコ・オットセイ猟に賭けるところが仙河海シリーズという感じよりも熊谷さんの別シリーズ、森三部作の『氷結の森』の趣のようだ。オットセイ猟で財を成しても仙河海で人望は得られないところはなんともシビア。最終章は意外な展開と驚きがあった。2025/04/26
ぜんこう
20
仙河海サーガの中で一番古い時代、明治・大正・昭和のころの菅原甚兵衛を主人公とした話。「鮪立の海」で焼津で船の斡旋をしている甚兵衛が少し出てきたけど、その本人の仙河海時代の話でした。妾の子として生まれ、沖買船からあるきっかけでラッコ・オットセイ猟に変わってから大儲けして・・・でも、仙河海は津波や大火で何度も町が壊滅。元となっている気仙沼もそうだったみたい😢 でもこんな金持ちになってみたいけど僕には無理😅2024/05/12
バボイヨシヤ
12
『邂逅の森』『相剋の森』『氷結の森』の森三部作はじめ、男臭い世界観が好きで何冊か読んでいる。この世で一番憧れる仕事は“漁師”だし、一番カッコいい肩書きは“海の男”だと思っている。「男には勝負すべき時がある!」というベタベタな帯コピーが突き刺さる楽しい一冊だった。 時代設定が前近代的価値観に覆われた物語ではあったが、きっちり熊谷達也的エンタメにビシッと振りきっているので気持ちよく読めた。気仙沼をモデルとした漁港の街に生きる男の一代記。「腹を据えるとはどういうことか?」という人生の命題に向き合った快作。2019/05/01
pio
7
熊谷達也さんの作品は久しぶりで楽しく読めました。中心のテーマがちょっとはっきりしないのが残念な気がしましたが、甚兵衛の痛快で波瀾万丈な半生の物語と思えば良いのだ、と結論づけました。2023/10/18
たぬ
5
☆4 明治後半からの50年、三陸の海の男の物語。大地震からの大津波を乗り越え、密漁、金の工面、各地で女郎を身請け等々。若い頃は荒くれていた甚兵衛が年齢を重ねるにつれ統率力や決断力を身につけていく様がよく描かれてる。妾の実娘との間に子を作ったのにはかなり引いたけど、ラストシーンの札束ばらまきは私もなんだかスカッとした。欲を言えば孫六のその後をもう少し詳しく! この「仙河海サーガ」は他のも読みたい。2020/04/03