内容説明
人は詩人や小説家になることができる。だが、いったい、批評家になるということは、なにを意味するであろうか(本文より)――中原中也、富永太郎らとの交友関係、未発表の書簡や広汎にわたる資料を駆使して、小林秀雄の批評の成立、構成、その精神に迫る。『夏目漱石』『作家は行動する』などで出発した批評家・江藤淳の自身への問いは、確固たる地位を築く記念碑的評伝となった。新潮社文学賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
10
江藤淳による小林秀雄。デビューから戦後直後までの小林の足取りを辿りながら、「父」にも「子」にもなれない引き裂かれた状況に生きる批評家の姿を描き出すわけだが、評伝としての側面と分析としての側面がほとんど同化しているようで、そこに小林と江藤それぞれの自己愛が累乗している感を覚えた。中原中也・長谷川泰子との三角関係に関するところなど、青春や恋愛をひたすら大きな事件に描いていて、気持ち悪さすら漂う。この気持ち悪さが日本思想・批評史の本道として今でも理解される二人の間で生じていることを、どう考えればいいだろう。2019/03/14
fseigojp
10
中原中也と長谷川泰子をめぐる色々 そして泰子から道路に突き飛ばされ死にそうになるまでの経緯 この間、老母はひとり鎌倉で息子の帰りを待っていいた 後年その親不孝をしみじみ述べている(蛍になってオッカサンが帰ってきたような気がした。。。名文ですな)2015/07/29
oz
9
初読。小林秀雄について語ることは日本の批評について語ることに等しい。そして小林にとって批評とは「作品を通じて自己を語ること」で、有り体に言えば作品をダシにした自意識解析の批評方法であった。ならば、本書のような評伝を通して小林を知ることも、迂遠なようで小林批評への理解を深める有効なアプローチかも知れない。個人的には、小林の自分の実存に引き寄せて、他の読みを拒絶するような手法が苦手で苦手でならないが。2018/05/14
きじねこ
4
20年ぶりくらいの再読。なんとなく本棚から引っ張り出してきたのだけど、緊張感の高い文体で、予想以上に夢中になって読みました。 小林の言う「批評とは竟に己の夢を懐疑的に語る事ではないのか」を、江藤淳が実践している感じが面白いところであり、弱さでもあるような…小林が年を重ねるにつれ、江藤の語り口が恣意的に、無理のあるものになってゆくと感じた。「黙して処した」は論じ難いのは分かるけども。 しかし長谷川泰子って凄い女性だ。『美人』とかを超えた魅力のあるひとだったんだろうなー。2021/06/30
みつ@---暗転。
0
**** 院ゼミ課題本2025/01/11