内容説明
戦時下、大病で富士山の見える故郷・小田原の下曽我に帰った著者は、自然界の小さな虫の生態にも人間の生命を感じ、自然との調和のなかにやすらぎを見出す。本書は、文学への出発時の芥川賞受賞作「暢気眼鏡」から、最晩年の作品「日の沈む場所」にいたる14作品を収録。これらをたどることで著者の人生、ひいては人が生きることへの発見、喜びと慰めを読みとることが出来る、珠玉の作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
IKUNO
3
『美しい墓地からの眺め』(尾崎一雄) <講談社文芸文庫> 読了です。 タイトルから、前衛的な作品を想像していたのですが、短編私小説/随筆集でした。 私小説は苦手なのですが、この作品はなかなか味わい深く、面白く読むことができました。 特に「虫のいろいろ」「草除り」は非常に興味深い作品だと思います。 2015/11/02
YY
2
嫌味がなくてすっきりしている文章と感じた。2015/05/29
みきゃ
1
暢気眼鏡だけ読んだ
euthanasia
1
尾崎一雄というと彼の師である志賀直哉との比較で語られることが多いが、本書所収の短編『こおろぎ』を読むとまた別の角度から光を当てることもできるように思える。例えば、「私」が雑誌で見つけた作家K氏の言葉「私はもう死んだ者として、あわれな日本の美しさのほかのことは、これから一行も書こうとは思わない」を引きながら、自らの死生観と比較して見せる箇所。「私の仲間は、小さな弱い生きもの共だ」。ここに尾崎一雄のもっともわかりやすい思想表明がある。ちなみにここで引かれている作家K氏とはもちろん川端康成のことである。2014/06/27