ベートーヴェン捏造

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ベートーヴェン捏造

  • 著者名:かげはら史帆
  • 価格 ¥1,870(本体¥1,700)
  • 柏書房(2019/02発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784760150236

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内容説明

「運命」は、つくれる。
犯人は、誰よりもベートーヴェンに忠義を尽くした男だった──
音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の全貌に迫る歴史ノンフィクション。

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【イントロダクション】

「事件」が発覚したのは、1977年――ベートーヴェン没後150年のアニヴァーサリー・イヤー。
震源地は、東ドイツの人民議会会議場で開催された「国際ベートーヴェン学会」。

ふたりの女性研究者が、ベートーヴェンの「会話帳」――聴覚を失ったベートーヴェンがコミュニケーションを取るために使っていた筆談用のノート――に関する衝撃的な発表を行った。

会話帳に、ベートーヴェンの死後、故意に言葉が書き足されている形跡を発見したという。

犯人は、ベートーヴェンの秘書、アントン・フェリックス・シンドラー。
ベートーヴェンにもっとも献身的に仕えた「無給の秘書」として知られた人物である。
ベートーヴェン亡きあとは全部で3バージョンの伝記を書き、後年の──あるいは現代における「楽聖べートーヴェン」のパブリックイメージに大きな影響を及ぼしていた。

たとえば、ベートーヴェンが『交響曲第5番』冒頭の「ジャジャジャジャーン」というモチーフについて「運命はこのように扉を叩くのだ」と述べたという有名なエピソードは、シンドラーの伝記を介して世に広められたものだ。

そんな人物が、会話帳の改竄に手を染めていたとなれば。
それはベートーヴェン像の崩壊に等しかった。

以降、シンドラーは音楽史上最悪のペテン師として、研究者や音楽ファンから袋叩きに遭うことになる。

だが、彼をいたずらに非難することは本当に正しいのだろうか。
シンドラーのまなざしに憑依する──つまりは「犯人目線」で事件の全貌を追うことによって、いまいちど、彼が「嘘」をついた真の動機を明らかにすべきなのではないだろうか。

生い立ち、学生時代の行状、ベートーヴェンとの関係。
ベートーヴェンの死後、会話帳改竄に至るまでの経緯。
罪を犯したあと、どうやってそれを隠しとおしたのか。
そして、100年以上にわたってどのように人びとをだまし続けたか。

それらを知らずして、音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の真相に迫ることはできない。

音楽史上最悪のペテン師を召喚し、彼が見た19世紀の音楽業界を描き起こす前代未聞の歴史ノンフィクション ――ここに開幕。
新聞
・「中日/東京新聞」 2018年10月28日付朝刊 /三品信氏(中日新聞文化部記者)
・「共同通信」2018年11月24日以降地方紙配信/江川紹子氏(ジャーナリスト)
・「読売新聞」2018年11月25日付朝刊/宮部みゆき氏(作家)

雑誌
・「週刊現代」2018年11月17日号  
・「週刊文春」2018年11月22日号
・「小説すばる」2018年12月号/栗原裕一郎氏(評論家)
・「音楽の友」2018年12月号/小沼純一氏(音楽・文芸批評家、早稲田大学文学学術院教授)
・「モーストリー・クラシック」2019年1月号/澤谷夏樹氏(音楽評論家)
・「週刊ポスト」2018年12月3日号/井上章一氏(国際日本文化研究センター教授)
・「ぴあクラシック」Vol.49 2018/19冬/橘ララら氏(ライター)

目次

序曲 発覚

おもな登場人物


第一幕 現実
 第一場 世界のどこにでもあるド田舎
 第二場 会議は踊る、されど捕まる
 第三場 虫けらはフロイデを歌えるか
 第四場 盗人疑惑をかけられて
 第五場 鳴りやまぬ喝采

間奏曲 そして本当に盗人になった

バックステージI 二百年前のSNS―会話帳から見える日常生活―

第二幕 嘘
 第一場 騙るに堕ちる
 第二場 プロデューサーズ・バトル
 第三場 嘘vs嘘の抗争
 第四場 最後の刺客

バックステージII メイキング・オブ・『ベートーヴェン捏造』―現実と嘘のオセロ・ゲーム―

終曲 未来

あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

修一郎

86
「運命」が他人の後付けネーミングだなんて初めて知った。都合の良い「楽聖」ベートーヴェンを創りあげるため,虚実切り貼りして一生かけて伝記を書いた男の物語。ノンフィクションと思って読み始めたので,シンドラーや彼の敵たちの語り口に戸惑ったけども,本書は筆者の修士論文を基に小説仕立てに編集しなおしたものだそう。史料では再現できないシンドラーの心情がたっぷりと描かれていて,疎まれながらも愛憎こもごもでベートヴェンに仕え続けたシンドラーが表現されていてめっぽう面白かった。さすが宮部みゆきさんお勧めの「徹夜本」でした。2019/01/03

trazom

50
シンドラーによるベートーヴェン伝の胡散臭さは有名である。特に、1977年の国際ベートーヴェン学会で、会話帳の改竄が公表されたのは衝撃的だった。この本は、シンドラーが、どんな心理で、どんな行為を行ってきたのかを推理して書かれたフィクションである。歴史的事実を丁寧に下敷きにしているから、著者の説明には、極めて高い説得力と納得感がある。数々の改竄や嘘にも拘らず、結果的に、シンドラーは、不朽のベートーヴェン伝説を生み出した「名プロデューサー」だったことになるのか…本の副題は意味深である。抜群に面白い一冊だ!2019/01/16

マエダ

44
1オンスの史実は1ポンドの美辞麗句に匹敵する ベートーヴェンを伝記で世に広めたのは1ポンドの美辞麗句の使い手シンドラー。盛ることの怖さを感じる中、必要性も感じてしまう。2024/01/17

星落秋風五丈原

40
生きている間も死んでからもベートーヴェンは受難の人である。その一端は『偉人は死ぬのも楽じゃない』に描かれた死の瞬間でも窺い知れる。また、小説『モーツァルトは子守唄を歌わない』のエピローグでは、頭蓋骨を盗もうとする輩が現れた件が紹介されている。本書はオペラのように章タイトルが冠されている。表紙装丁にも工夫が凝らされている。ベートーヴェンとシントラ―の間にはうっすらと亀裂が入っており、裏側ではとある人物が炎上している。これは何を意味するのか。有名なエピソードが、実はねつ造されたものという疑いが浮上した。 2018/12/04

breguet4194q

34
後世の人々は「事実」を知りたがるが、シンドラーの認識は、仕えたベートーヴェンを「神格化」することがすべて。余計なよもやま話は世間に知られなくていいという考え。個人的には、手帳を改竄したり処分してしまった事への憤りはあるものの、自分の大切な人を神格化したい気持ちはわかる。結果的に、後世の人々は、その様な事実を認識した上で、ベートーヴェンとその音楽を堪能するしかない。読み物としては、今まで誰も気に留めてなかった視点が面白かったです。2020/11/14

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