内容説明
罪を見つめ、罰を引き受けるとはどういうことか。死を受け入れ、乗り越えて生きることは可能か。1968年の横須賀線爆破事件の犯人で死刑囚の短くも懸命に生きたその姿を描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てん06
24
どんな凶悪な事件を起こしても、そしてその結果死刑判決が下され、執行されても、執行される頃にはその事件が風化していることが多い。ここで書かれる死刑囚のことも、事件のことも知らなかった。高等教育を受けてはいないが、短歌にその才能を開花させた。死刑囚の純多摩良樹の日記、短歌、手紙からなる。死刑囚ではあるが執行宣告を受けたのち、執行前夜の最後の手紙には胸が詰まる。2019/04/23
テツ
18
1968年に起きた横須賀線電車爆破事件の犯人であり死刑執行された男の手記。死刑宣告を受け死を待つだけの身でありながら短歌の才能を開花させ、教誨師の訓戒に(それと自身の意思と悔恨)より執行されるまでの日々を懺悔の心を磨き上げ続けてきた様子は自業自得とはいえ胸に迫るものがある。この世には取り返しのつかない過ちがあるのだろうし、それを明確にあるとする社会の方が好みではあるのだけれど、もう少しだけ何かが違えば決定的に道を踏み外す前に晩年のような清らかで落ち着いた心境で市井に生きられたんだろうな。残念でならない。2020/05/01
gtn
15
横須賀線爆破事件の犯人で死刑囚の獄中手記。永山則夫の「無知の涙」を読み、マルクス主義に凝り固まった永山の浅薄さを軽蔑する。そして、永山にはキリスト教的「愛」が必要だと同情する。死刑囚による死刑囚の批判を奇異に感じるのは偏見か。彼は、最期の日まで血を吐くように、短歌を紡ぎ出した。「鴉さわぐ獄舎のめざめいづこにも夭死はあるぞ友よおちつけ」魂のざわめきを感じる。2019/05/07
湿原
13
罪の重さ、それは罪を犯した者にしかわからないものだろう。本書の死刑囚、純多摩良樹は死刑執行よりも、執行まで生き続けなければいけないことを恐れている。世間からは「非人間的」と思われている死刑囚たちの拠り所となるのは宗教しかない。彼はプロテスタントの洗礼を受ける。そして短歌作りに集中することで苦痛から少しでも逃れようとする。しかしそれでも消えぬ罪は常にのしかかってくる。本書は日記形式になっているが、その経過を辿るたびに、ヒリヒリとした彼の心の葛藤が読み取れる。殺人は極悪であるが、同じ人として彼の苦悩を憐れむ。2025/05/22
みなみ
9
横須賀線爆破事件の犯人である死刑囚の青年が獄中で短歌をつくり、キリスト教に帰依する。彼と交流のあった加賀乙彦による記録。全体的に陶酔めいた様子が目立つのだが、いつ処刑されるか分からぬ身の上ならば精神が高ぶらずにはいられないのだろうと思った。それまで歌作に縁などなかったのに短歌を作り続けて評価を得ているのが凄い。本人からすれば「死刑囚だから注目してもらえる」という思いはぬぐえないかもしれないが。死刑囚にならなければ彼が歌を作ることもなかっただろうかと思うとなんとも皮肉だ。2025/01/20
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