内容説明
私立探偵ウルフ。ドイツで総統になるはずだった男。
作家ショーマー。アウシュヴィッツで総統の夢を見る男。
かつてウルフはドイツで有力な政治家だった。
しかし、“大転落”と呼ばれる政変が起こり、
権力を失った彼は、ロンドンに逃れ私立探偵をしていた。
ユダヤ人嫌いのウルフだが、金のためにユダヤ人女性の行方を探すことになり、
さらに娼婦連続殺人事件にも巻き込まれてしまう。
そして調査を進めるうちにウルフは
元同志たちが暗躍するイギリスの暗部へと足を踏み入れる。
時間と場所を隔てた別の世界。
アウシュヴィッツで、作家が夢を見ていた。
自分から、ユダヤ人から、すべてを奪ったあの男の夢を。
夢の中では男は私立探偵をしていた――。
ひとから想像力を奪うことはできない。
だが、すべてを奪われ想像力だけが残されたとき、それはひとに何をもたらすのか。
ホロコーストを新たな視点で描いた、歴史改変奇想ノワール。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
115
読んだあとでこの作品がいわゆるif小説ということと、さらに入れ子構造のような感じのものであることがよくわかりました。ドイツのヒトラーが政権を獲りそこねてイギリスに亡命して探偵となっています。そこに金持ユダヤ人から人探しを頼まれ、イギリスでの暗部に足を踏み入れたり、ドイツ時代の仲間と遭遇したりします。暴力や性が書かれていて少し辟易しましたが最後まで読んでやっと理解できた気がします。2019/09/18
HANA
70
探偵ウルフ。かつてドイツの有力な政治家であったが、政変で転落した男。一方、作家はアウシュビッツで夢を見る。もうあの政治家が倫敦で探偵をやっているって設定だけで勝ったようなものである。その上ヘスを始めとするナチの面々が出てくるとなるともうお腹一杯、何をや言わんかである。難点を言えばウルフと作家の間にほぼ関連性が無い点や個々の事件の関連性であるが、そんなものは何のその、我々はかつてのハードボイルドを読んだようにウルフの活躍や災難を思う存分楽しめばいいのである。一種の詩情を湛えたラストまでまさに一気読みでした。2019/02/02
ゆのん
59
【kindle】大転落の後、イギリスに亡命したヒトラーがウルフと名前を変え探偵として暮らしている。そのウルフの元にユダヤ人の大富豪の娘からの行方不明の妹を探して欲しいとの依頼が舞い込む。探偵物というよりかはナチスが人々に与えた影響とその余波についての話に感じる。探偵としての活躍はほとんど感じられなかったが『もし…』というのが前提の内容でそれなりに楽しめた。本作終了後の歴史的背景の解説は興味深く面白かった。2002019/06/25
わたなべよしお
25
面白かったし、読ませるんだけど、読み終えると、大きなはてなマークが。結局、何だったのか、よく分からなくなった。正直に言って、謎解きも全然だし、特に黒幕みたいなのもいないようだし。途中までの日々の描写は面白いけど、最終的にエンタメとしてはどうかなぁって思う。ラストは実に皮肉なんだけど、ユダヤ人やドイツ人はもっと痛烈な何かを感じるのだろうか。2019/04/29
k16
23
ドイツでの大転落後、ヒトラーはロンドンでウルフと名乗り探偵をしているという改変もの。 ユダヤ人依頼人の妹を探すミッション遂行中にいろんなことに巻き込まれていく。 謎解き要素は薄く、暴力描写、倒錯した性描写は多い。 「完璧な夏の日」同様作者のアメリカへの想いも垣間見え面白かった。2025/04/30
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