内容説明
吉田修一からの挑戦状。ノンストップ長篇!
ビール会社課長、明良。都議会議員の妻、篤子。TV報道ディレクター、謙一郎。
それぞれの悩みや秘密を抱えながら、2014年の東京で暮らす3人が人生の中で下した小さな決断が驚愕のラストへとつながる――
「週刊文春」連載時から話題沸騰。
吉田修一史上、最も熱い議論を呼んだ意欲作を文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
122
別々の3つの物語が、最終話の70年後の未来で一つにつながるという(著者にしては)珍しい展開の作品です。ちょっとだけ波乱ありの日常が描かれるのですが、一体どこへ連れていかれるか分からず最終話でテンション下がり気味。しかしながら、終盤にかけて盛り返してきます。SF作家ではないので、そこは多めにみましょう。2014年の「東京都議会のセクハラやじ問題」が、さらりと触れているのですが、これは吉田修一流の抗議の表れ?それとも、2014年という時代の一コマを切り取って見せただけでしょうか。確かにおっ!とはなりますね。2019/12/13
小説を最初に書いた人にありがとう
120
いつもの吉田修一的な平穏な生活の中に僅かな不穏な雰囲気で話が進む。8割程の共感と残りの違和感。なぜかこの話運びが堪らない。第三章まで登場人物達を変えながら話が進み、第四章でどう収斂させるのかという期待を驚きと共に裏切り、予想できない展開にマジか?!となった。ただこの実験的とも思えるストーリーには驚いた。文春の連載らしいが風刺も効いていたように思う。謙一郎の話が男女のヒリヒリ感が特に吉田作品を感じた。2019/03/16
アッシュ姉
88
なにげない日常風景が少しずつ陰りを帯びて、春夏秋が過ぎ冬になると景色が一変する。タイトルから壮大なストーリーを想像していたが、想定外のスケールへ飛んで戸惑う。純文学のようで解釈が難しい。『わたしを~』『絶対~』を思い浮かべながら読了。印象に残った言葉を抜粋。「正しさというのは傲慢だ」「間違っている自分の方が正しく見える」「自分の気持ちを騙そうとしても、ダメなものはダメ」 2020/09/23
かみぶくろ
82
4.0/5.0 相変わらず人間を描く筆が冴え渡ってる。立体的で多面的で社会的。どんなカテゴライズもキャラクター化も寄せつけない。人間って本来そういうものだ。さらにすごいと思うのが、そんな人間の集合体が、社会を、そして未来を作っているっていう事実を、作品全体を持って体現していること。著者の近未来SFは新鮮だったけど、現代の不寛容、正義の暴走、差別意識などの諸問題を、地続きでリアルに未来社会に移行できる手腕と想像力は流石としか言いようがない。2021/03/16
速読おやじ
73
第3部(秋)途中まで吉田修一にしては、インパクトが足りない平穏な小説だなと思っていたら、流石に第3部終盤から一気に物語は動き出す。そして度肝を抜かれた第4部(冬)。この展開は本当に吉田修一なのか?めちゃくちゃ面白かったのだが、著者のコアなファンから見ると賛否両論だったのではないかと。何を書いてもネタバレになってしまいますが、第4部を読みながらきっと、前に戻って色々と確認することになるでしょう。結局はスケールの大きな物語になっている。そして、どんなラストにするのか楽しみにしていたのですが、まあまあベタ(笑)2022/06/17