内容説明
《ユングの東洋思想・宗教論文の集大成が待望の復刊》ユングにとって東洋との出会いは、ヨーロッパ精神の限界を越える思想を築く跳躍台になった重要な出来事であった。彼は単に古典の思想を文献学的に研究するのではなく、現代人の魂のあり方にかかわる問題を見出そうとした。チベットの死者の書の心理学、禅の瞑想等の六論文からなり、訳者の丁寧な解説を付し、詳しい訳注を付けた。東洋思想を再発見するためのよき導きの書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
著者の東洋理解は著者自身の思想の投影であると批判される。正統な読みからすれば、本書で扱う『チベットの死者の書』『観無量寿経』の浄土思想、鈴木大拙の禅、易経等の読みは、意識の放擲を目的とする東洋思想に比して意識的・能動的過ぎるだろう(鈴木大拙も著者の禅の理解に疑義を呈した)。が、無意識と意識からなる心のシステムを個性化に向わせるため、自由連想によって自己を「拡充」させる水平的読みと、正確にテクストを読む垂直的な読みの、異なるもの同士の言語上での出会いの中で、読む行為に瞑想状態を不意に感覚できた点は興味深い。2021/05/20
