内容説明
「もう、終いにする」。戦後の知識世界に輝くビッグネーム・小林秀雄が、晩年、10年にわたって取り組んだ『本居宣長』は、執筆に難渋し、結論に達しないまま意外な一言で終わってしまった。日本が誇る知性は、なぜ最後の仕事で挫折したのか。彼がこの書物にかけた思い、そして小林がたどり着きたかった「ゴール」はどこにあったのか。小林の批評ぶりを多角的に検証しながら、批評とは何か、その原理について考える。
目次
序章
『本居宣長』という書物
外堀を埋める 『本居宣長』を読む・その1
源氏物語のほうへ 『本居宣長』を読む・その2
『古事記伝』を読む 『本居宣長』を読む・その3
『古事記伝』という仕事
小林秀雄の悲哀
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
94
私ンとってはなつかしい小林秀雄の「本居宣長」についての論考で非常にきめ細かな部分もあったりして再度小林の本を読まないという気持ちにさせてくれました。むかし小林の本を読んだときにはかなり長いし、しかも宣長の古事記伝に関するものでその原文を読まねばという気持ち(気持ちだけでした)を持ったことがあります。この本を書くについて橋爪さんは宣長の原文もあたられたのでしょうが私にとっては難解であるという印象を持ちました。再読しないとだめですね。2019/04/21
コウメ
35
久しぶりの本に小林秀雄に関する本を読んだが、まず本居宣長について全く知らなかったため深くわからなかった。また古事記についても同じである2023/07/19
ころこ
28
『古事記伝』を著した宣長について、小林が批評した『本居宣長』を著者が批評している。小林は戦後「たんと反省するがよい」と言い放った論敵のイデオローグである、いわば絶対的他者の本居宣長を取り込み失敗する。小林の批評に批判的な著者が、絶対的他者としての小林を取り込んでみる。言説の勝負が重要でないのは、その勝負が無意味なほど共に戦争は完全に負けている側だからだ。「たんと反省するがよい」と言った先は、技術論を輸入しただけの日本の批評のことではないか。漢心を拭い去る宣長の仕事が自己批評ならば、それを批評に選んだ小林は2020/03/25
月をみるもの
12
"戦後になって小林は、一億総慣悔の騒ぎを傍目に、「僕は無智だから反省なぞしない、利巧な奴はたんと反省してみるがいいじゃないか」、と言ったという。素直でない小林の言い方は、私の耳には「僕は、無智でもないし、利巧な人間なので、たんと反省しました。けれども、どうその反省を口で 言い表せばいいのか、自分にはわかりません」と、聞こえてくる。「たんと反省」した小林は、それでも反省が足りないと思った。なぜなら、反省をまだ言葉にできないから" →引用続く2020/09/12
echo.
4
学者、思想家の肉声を聴こうとした。カテゴリの誤謬である。しかし、小林は宣長の言語ゲームのプレイヤとして走りだし、しめくくった。いずれにせよ、小林の舞台回しがあってこそ、日本人として日本語の言語ゲームに向き合えていなかった前後の社会的トラウマから、そろそろ脱するときがきているのだろう。口火をきる覚悟が、ここにはある。2019/03/15
-
- 電子書籍
- 嘘つき陛下が私に執着する理由【分冊版】…
-
- 電子書籍
- 日露戦争物語(分冊版) 【第91話】 …
-
- 電子書籍
- バッドガイズ2
-
- 電子書籍
- 株価とニュースの関係が面白いほどわかる…
-
- 洋書
- Saint Jack