内容説明
蕪村や応挙、若冲、蘆雪に蕭白。ほぼ同時期、同じ地に豊かな才能が輩出した。旧来の手法から抜けだし、己の個性を恃んで、奔放に新しい表現を打ちだす。十八世紀の京都は、まさにルネサンスの地であった。「奇想」の美術史家・辻惟雄は、彼らの作品に向き合い、多数の論考を遺している。それらを抜粋し、作品の解釈から時代背景や人物像にも迫ってゆく。あの時代の京都を、彩りをもって甦らせる試みである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Tadashi_N
30
時代や住居が近いことで、お互いに影響し合う。画風が揃わないのは、各々が強烈だったから?2019/10/14
六点
9
江戸初期の文人画,池大雅、与謝蕪村、円山応挙とその弟子たち、若冲、芦雪、蕭白までの18世紀に京都を中心に活躍した画家たちについての論考を纏めてある。何せ初出が1965年(!)から2010年に至るまでのほぼ半世紀に亘る期間の論考であるため、若冲絵ヲタ説という筆者本人が否定してしまった説が出ていたりするのはご愛嬌である。が、古い論文における所謂「奇想派」の評価の低さに憤る著者の熱意が、現代における言わば評価の逆転に繋がったのであるなあとしみじみする。しかし、これらの画家を食わせてた京都って2019/02/27
mawaji
7
図書館の書評に載った本コーナーで目にして手に取りました。私の美術館巡りをするきっかけとなった辻先生の過去の著作に応挙の書き下ろしを加えた一冊。「応挙はプロ、若冲はアマ」「徹底した下品さ、庶民性こそ蕭白の真骨頂」「下層の美学」という言葉に納得。過去の巨匠の筆意に倣って描いた作品が原作者の絵にさっぱり似ていないという蕪村が原画よりはるかにすばらしい作品を生み出しているという記述は、無名のアーティストを発掘してカバーし、独自のアレンジで自分たちのオリジナルのように歌い上げたビートルズを思い浮かべてしまいました。2019/07/25
汲平
2
ごく狭い地域に、それぞれ全く異なる画風の才能が密集してた奇跡のような十八世紀京都。作者は「奇想の系譜」の辻先生。中国絵画の伝統についても書かれているのだが、親しみのない画家たちで図版がないので理解できない部分が多く未消化な感じ。本編というか主役たちの解説も図版がモノクロの貧弱なものなので、応挙の精緻さや、蕭白のグロテスクさなんかが伝わりにくい。それが残念。あと、表紙カバーに章を設けていない岸駒を使ったのはなぜ?謎だ。2019/04/17
なおた
1
わたしの個人的趣向にて第6章の「伊藤若冲」のみ通読しました。「恐らく、30を過ぎてから、何か1つは趣味をとすすめられて画筆を把ったのではなかろうか」(本書36頁)という記述に驚かされた。画業一筋で、人生を過ごした人だと、先入観から思い込んでいたので、40歳を超えてから家督を弟に譲り、楽隠居の身となって、そこから画業一筋となったことを、この一冊を通じて、初めて知りました。2025/12/12
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