内容説明
ある晩、夫が急死。これで嫁を卒業できると思いきや、舅姑や謎の女が思惑を抱えて次々押し寄せる。“愛人”への送金、墓問題、介護の重圧……がんじがらめな夏葉子の日々を変えたのは、意外な人物と姻族関係終了届!? 婚姻の枷に苦しむすべての人に贈る、人生逆転小説。『嫁をやめる日』を改題。
さだまさし氏 熟読&痛感!
「人生の荷物が多ければ多いほど、この本は笑えて泣けて、ホッとする。」
夫が亡くなった時点で、自分は誰の妻でもなくなり、晴れて自由の身だと思っていた。
だが、どうやら違うらしい。今もこれからも「高瀬家の嫁」なのだ。それも、夫が生きていた頃より、もっとずっと明確に。
(本文より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
651
この人の小説はいつもながら軽快で面白い。読みながら、新たに2冊を発注してしまったくらい。本書は地方の旧家の息子と結婚した夏葉子が、突然に夫に先立たれたところから始まる。当然のことながら、彼女の境遇はあれやこれやと変化を余儀なくされる(とりわけ対人関係が)。そんな彼女が「嫁」をやめるまでを描く。弁護士の角田龍平氏が解説を担当しているが、女性にとっては法律的にも因習的にも日本の社会は女性たちの味方とは言い難いようだ。本書はそうしたことに対するプロテストなのだが、垣谷美雨の筆致はあくまでも穏やかで暖かい。2021/05/02
ミカママ
580
読む人をとことんイヤな気分にさせる(笑)垣谷さんの本領発揮。40代で夫を亡くした夏葉子。近隣に住む舅姑は、悪い人たちではないのだが…。日本の地方都市に行けば普通に転がっている話だろう。それをここまでのエンタメ作品に仕上げるのだから、さすがだ。わたしだってイヤだな、夫といっしょの墓なんて(笑)というか、そもそも日本の墓制度自体を見直す時期に来ていると思う(今回の帰国でもみな口を揃えていた)。夏葉子が自由に暮らせる世の中になりますように。ついでに支えてくれる彼氏のひとりでも出来るといい。2022/08/01
ノンケ女医長
289
「嫁ぐ」という言葉は強烈。女に家と書くんだから。嫁ぐことのできる女性を心から羨ましいと思うけど、幸せだけでもないみたい。本音をひたすら隠して相手を敬う。限界を迎えたある日、お互いを口汚く罵る。終焉を迎えたと思ったら、時間を置いて次に進んでいく。葛藤の描写が、とても見事だった。地方都市の方言も作品に美しい彩を与え、本当に良かった。男性性を遺憾なく発揮し、女性を頼って生きていく工藤洋輔に「夕陽ば見よう」(188頁)と、私も言われたい。彼とのデートは、このうえなく魅力的だと思う。2022/12/19
もりやまたけよし
232
話の進み方が小気味よくてきぱきとしてすっきりしている。ついつい感情移入してしまう。田舎の人間関係については、あるあるネタでついついうなづいてしまう。2021/02/10
🅼🆈½ ユニス™
178
タイトルが面白く興味を抱いて内容も知らずに手にした作品。嫁の心理ってこうなんだろうなと思える有益な一冊。作家の哲学とか本を通して表現したい物など置いといて、普通以上に面白かった。本音を隠してタテマエだけで生きるのって相当疲れると思う。結末も好き❗️2019/03/24