内容説明
デザイン会社に勤める由人は、失恋と激務でうつを発症した。社長の野乃花は、潰れゆく会社とともに人生を終わらせる決意をした。死を選ぶ前にと、湾に迷い込んだクジラを見に南の半島へ向かった二人は、道中、女子高生の正子を拾う。母との関係で心を壊した彼女もまた、生きることを止めようとしていた――。苛烈な生と、その果ての希望を鮮やかに描き出す長編。山田風太郎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
311
『私たちクジラ見に行くんだけど、いっしょに行かない?』そんな言葉の先に、それまでそれぞれに死と対峙していた三人の主人公たちが『クジラを見に行く』という行動を共にしていく様が描かれるこの作品。そこには、三人の主人公それぞれが抱える人生のドラマが丁寧に描かれていました。年代も境遇も全く異なるそれぞれの主人公たちが歩む人生のあまりの閉塞感に鬱屈とした思いに苛まれるこの作品。さまざまなことが起こる人生の中で、私たちは何を大切にすべきなのか?光差すその結末は私たちに一つの大きな示唆を与えてくれた、そんな作品でした。2023/05/13
hiro
223
『ふがいない僕は空を見た』『よるのふくらみ』に続いて窪さんの本は3冊目。先に読んだ2冊はともに一章から性描写があり、窪さんといえば、‘性’を描く女性作家というイメージを持ちがちだが、『ふがいない』でも、貧困家庭や助産院を描いて、‘生’もテーマにしている。その窪さん2作目のこの作品では、48歳の女社長、その会社の24歳の男性社員、そして2人と縁のなかった16歳の少女の、迷う3人を通じて、‘生’を正面から描いている。性描写が苦手という方にも安心して読め、少し人生に疲れたときに読むのにピッタリの作品だった。2014/07/11
にいにい
210
初窪美澄さん。由人、野乃花、正子の3人それぞれの親子関係、いや、母子関係による子供の絶望感と苦悩の末のほのかな光を鮮明に描いてくれる希望の一冊。母の思い込み(自分の思い通りの子育て、お金への過信、病気への恐怖)を一方的に子供に与える結果がリアルだ。母が居なくても子供は育つのに、母が思い込むと子供は死に向かう。なんで、こんなことになるんだろう?人間とクジラは違う。でも、クジラの自然な生き方が、言うべきことを言う機会を与えることもある。静かな強さを与えてくれた。2015/03/03
相田うえお
185
★★★☆☆17017 色々な人間関係がありますが、その中でも家族関係というのは切っても切れない縁だけに簡単には避けられない訳で、小さなすれ違いが積もり積もってどうにもならなくなる前に何か出来ればいいのですが。。2章に入ったら「あら?短編集なのかな?」とか思ったけど上手く話がつながりました。さて話は変わりますが、皆さんは古い温泉旅館や昔ながらの銭湯で、ケロリンと書かれた黄色い洗面器を見た事がありますか?「頭痛にケロリン」ていうやつかな?なんで薬屋が洗面器なんだろ?CM媒体でも何か他にあったろうに。。2017/02/25
エドワード
156
九州の海辺にクジラが迷い込んだ。絶望的なクジラの命。押し寄せる仕事と失恋でうつ病になる由人。経営が行き詰まり自殺を図る社長の野之花を助けた由人は、ニュースを見て「クジラ見てから死ねばいいじゃないですか」と飛行機に乗る。海辺の町は野之花の故郷だった。孤独な少女、正子を拾い、三人はクジラの浜辺に着く。丁寧に描かれる三人の来し方の辛さ、中でも娘を捨てた野之花の人生が凄絶だ。人の世もまた、生きることに絶望している人間が星の数ほどいるのだ。三人の心が海辺の町で癒される、怒涛の終幕が圧巻。おばあさんがいい味出してる。2017/05/13
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