内容説明
かつては炭鉱で栄えたが、すっかり寂れ、高齢化ばかりが進む北海道苫沢町。理髪店を営む向田康彦は、札幌で働く息子の「会社を辞めて店を継ぐ」という言葉に戸惑うが……。(表題作) 異国からやってきた花嫁に町民たちは興味津々だが、新郎はお披露目をしたがらなくて――。(「中国からの花嫁」) 過疎の町のさまざまな騒動と人間模様を、温かくユーモラスに描く連作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馨
268
冬は極寒の地となる田舎町の苫沢の町民たちの話。理髪店の話かと思っていたが主人公が理髪店のオーナーというだけで町で繰り広げられるちょっと大きな出来事の話でした。人口が少なく、町民が顔見知りで、多少おせっかいな部分もあるけれど基本的に皆が家族のような存在で温かい話でした。こんな町ありそう。2020/04/11
イアン
180
★★★★★★★☆☆☆2022年に映画化された奥田英朗の連作短編集。北海道苫沢町で理髪店を営む向田康彦を主人公に、過疎化と高齢化が進行する町で巻き起こる「事件」をコミカルかつハートフルに描いている。それは中国出身の花嫁を迎えた独身男に対するお節介だったり、新しくオープンしたスナックのママを巡るおじさん達の恋の争いだったりするのだけれど、共通するのは田舎特有の人間関係の濃さ。誰かが困っていれば過剰なまでに関与し、真新しい出来事があれば皆で押し寄せる。都会では失われてしまった古き良き日本の人情がそこにはあった。2025/03/11
エドワード
172
過疎の町とは、こんな感じか?勤め先がない。若者がいない。ショッピングセンターも総合病院も隣町。北海道のそんな町・苫沢町に暮らす人々。町中が知り合い、何事もつつぬけ、同じ毎日の繰り返しだ。札幌の会社を辞めて理髪店を継ぐと言い出す息子、夏祭り、中国から来た花嫁、東京から戻ってきたスナックのママ、映画のロケ隊。ちょっとしたことが退屈な日常をほんの少し賑わせて、また退屈な日常に戻る。こんな町が日本中にあるんだろうね。町出身の青年が犯罪を犯す最終章はハラハラしたが、まあ最良の結末かな。ほんのり温かく少し寂しい。2019/04/20
相田うえお
159
★★★★☆19005 初っ端から引き込まれました。この作品、お見事です。北海道の中央に位置する苫沢という町が舞台。炭鉱町として栄えたものの閉山による衰退で財政破綻し、人口流出が止まらないという設定の町。過疎化問題,高齢化問題,嫁不足問題、その他に、訳あり帰郷,ロケ地誘致,誰もが顔見知りという地域性、などと、過疎化地域で考えられるテーマのオンパレードです。決して明るいとは言えない話が多いだけに『面白かった〜』という言葉は適してない様な感じでもありますので『興味深く読む事が出来ました〜』と結んでおきます。2019/01/05
5 よういち
143
過疎の町の人々の心情も人間模様も、奥田英朗にかかれば、こうなるんだ。 かつて炭鉱で栄えたが、今は高齢化が進み過疎化した北海道苫沢町で床屋を営む向田康彦。静かな町で起こる騒動に何かと巻き込まれていく。 向田理髪店の後継ぎ、中国人花嫁、新規開店したスナック騒動、映画ロケ誘致、住民の息子が都会で起こした詐欺事件。 町に住む人々の口癖は「苫沢なんて...」。町の閉塞感にやり場のないものを覚えつつも、そこで生きていかざるを得ない顔見知りの住民たちがお互いに関わりを捨てきれない姿を温かさとユーモアを交えて描いている。2020/10/11
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