内容説明
唯一の家族だった母を亡くした明日香は、遺品の中から一通の出されなかった手紙を見つける。宛名は「林鋭生様」。それが将棋の真剣師の名だと知り、明日香は林を捜すことに。ある対局の後、忽然と姿を消したという男と、母との関係は。昭和を生きた男女の切なさと強さを描いた傑作長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
207
塩田 武士は、新作中心に読んでいる作家です。未読の本書の新刊文庫を図書館の新刊コーナーで見つけたので読みました。現在では存在していない?将棋の真剣師の物語、面白くなくはないですが、背表紙に書かれた傑作までのレベルではありません。やはり「盤上のアルファ」を読まないといけないかなぁ。2019/03/07
KAZOO
117
塩田さんの「盤上のアルファ」に続く物語です。主人公は異なりますが前作に出てきた登場人物たちが結構重要な役割などを果たしています。母親を亡くした女性が母親が出さないでいた真剣師あての手紙をもとにその真剣師を捜し歩く物語です。昭和のむかしの大阪の様子がうまく描かれている気がします。最後に作者とテレビで真剣師を演じた私の好きな石橋蓮司さんの対談が楽しめました。2019/06/09
のり
96
亡き母の遺品から出されなかった手紙が…宛名は「林鋭生」。新世界の昇り龍の異名をもった将棋の真剣師。伝をたどって捜索するが中々たどり着けない。知人に話を聞くなか、鋭生の過去が明らかになっていく。あまりにも衝撃が強すぎる事実。昭和の時代背景と共に目指した夢と、ならざるを得なかった真剣師。追い求めたものを手に入れる為に…アルファに出てきた彼等も健在でなにより。2020/03/09
Ikutan
81
亡くなった母親の遺品から出されなかった手紙を見つけた明日香は、宛名の林鋭生という人物を捜すことに。前作は読んでいないのですが、この林鋭生は前作、『盤上のアルファ』に登場した将棋の真剣師らしい。ということで、こちらは林鋭生という人物の半生を浮き彫りにすることで、真剣師や駒師という職人の世界を描いた物語。時代はどっぷり昭和。勝負の世界の研ぎ澄まされた緊張感や職人の矜持など読み応えありです。タイトルの意味も深いね。関西弁でユーモアのある台詞が今まで読んだ塩田さんの作品より読みやすかったな。前作も読まなくちゃ。2019/02/12
yamatoshiuruhashi
48
4年以上積読山で熟成させた「盤上のアルファ」の面白さからすぐに手配。真剣師・林鋭生を追う二人は本書初登場なるも多くの登場人物は「アルファ」と共通する。関西弁のやりとりが重たい設定も和らげてくれる。推理小説のような雰囲気。最後に語られる「有限の美学」に納得。巻末に著者と「アルファ」のドラマ化で鋭生を演じた俳優・石橋蓮司の対談掲載。これも読後に良い。映画「遊びの時間は終わらない」に言及されているが、好きな邦画の一つ。この後、このDVDを観よう。2021/01/24