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内容説明
われわれの中にも縄文人は生きている!? 近年の発掘調査、および科学的な分析技術の飛躍的な発展により、旧来の縄文像は次々に塗り替えられることになった。最新の知見を元に、最も新しい縄文時代像を明らかにする。縄文ブームの今こそ必読。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
62
縄文時代の歴史に関する概説書です。約1万6500年前の土器製作から2350年前頃の灌漑水田稲作までの時代です。著者は縄文時代を「戦後の新しい歴史観によって」作られた「きわめて政治性の高い歴史概念」であるとし、弥生時代・文化によって克服されるべきものとされているが、これ自体が「無理がある」としています。クリ林の育成や漆の採集・海水から塩を作るなどさまざまなことがこの時代に始まったのは驚きでした。ただし土器の製造が世界一古いというのはもう少し強調しても良かったのではないかと思います。2020/02/21
s-kozy
59
非常に興味深い「縄文時代」の通史を解説した本。1万年以上続いたとされる縄文時代だが、単一・単調な画一的な文化が長期に亘って存在したのではないのだという。比較的安定的な気候の中で日本列島域の各地方・各地域でそれぞれ個性的な環境適応が起こり、自然の資源化とその利用技術の発達が促された。居住形態は定住生活が採用され、それを支える生業形態・集団構造・精神文化の発達と資源交換ネットワークの発達が継起・連鎖した点にその文化の本質があるとのこと。これが科学的な根拠もある豊富な知見に基づき説得力豊かに述べられている。2019/10/24
コーデ21
39
近年の発掘調査や科学的な分析技術によって明らかにされた最新の縄文時代像が分かる本。これまで私が読んできたエンタメ系(笑)の土器・土偶本とは一線を画するアカデミックな内容でした。思わず大学時代の講義室を懐かしく思い出したほど😅 「縄文時代」と一括りに捉えるには地域差や時期差があり<画一的な生活&文化が長期間続いたわけではない>ということが深く理解でき勉強になりました。「縄文時代はヘルシーでミニマル、サステナブル」云々と持ち上げられる昨今の風潮に、ピリリと釘を刺すような冷静な論調が、とても印象的。2022/09/26
樋口佳之
36
つまり、周堤墓は、従来の縄文時代観によっては捉えることができない、すなわち格差のない平等な社会の産物とは考えにくい構造を持っていたことになるのだ。単純な平等社会ではなく、すでに社会に階層などが存在する「複雑化した社会」であった可能性は高い2019/03/27
サアベドラ
28
1万年以上に及ぶ縄文時代の歴史を一般向けに概説した新書。著者の専門は縄文後期の墓制。2019年刊。ここ数十年の所々の研究成果が随所に盛り込まれており、一昔前の貧しい縄文人と異なる、多様な自然資源や物質文化を持つ豊かな縄文人像が提示されている。この辺はハラリが書いていた豊かな旧石器人とも合致していて理解しやすかった。ただ、ここまで時代差や地域差が大きいと、著者も指摘する通り、従来のように縄文文化という大雑把な区分で一括りするのは無理がある。そろそろ縄文と弥生という大枠を含めて再考すべき段階に来ているみたい。2019/02/27