内容説明
澱んだほこりっぽい空気、窓から差し込む光、箪笥や長持ちの仄暗い陰。蔵の中でふと私は、古い遠眼鏡で窓から外の世界をのぞいてみた。それが恐ろしい事件に私を引き込むきっかけになろうとは……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
49
原稿の参考として「かいやぐら物語」のみ、読了。「鬼火」同様、本人しか知り得ない事を語るという構成に頭を捻りますが「鬼火」と違い、ちゃんと伏線は回収されますのでご安心を。遺体が朽ちていく様子は最小限だが、それ故にラストで白骨化した姿で発見されたという姿は愛した男性に死後も自分勝手に弄ばれた女性の姿が見えるようで一層、惨たらしい。私はこれこそ、グロテスクだと思う。だからこそ、切々と訴える様はまさに「我に恥見せつ」と怒り悲しんだ伊邪那美のよう。しかし、男女逆転させるとフォークナーの「エミリーに薔薇を」に重なるな2026/05/17
mochiomochi
25
横溝正史作品、読むのは何年ぶりだろう。6編の短・中編集。明治の終わり~昭和初期が舞台。映像でしかみたことのない当時の情景が美しく浮かぶ。美しくもおどろおどろしい情景を彩る生活や風習。耽美的で、退廃的な作品群。表題作「鬼火」は、横溝正史ワールドがダイレクトに伝わってくる作品。短いけれど最後の「面影双紙」が個人的には一番ゾクッとした。金田一シリーズのアドベンチャー要素は弱まるが、古典的な怪奇小説に触れたいときに戻ってきたい。2025/01/27
coco夏ko10角
23
6つの作品収録の短編集。昭和10年~11年に発表された作品。どれも雰囲気たっぷりでいい。2020/01/18
Valkyrie
11
中短編が6篇。最初の「鬼火」は読んだことのある「車井戸はなぜ軋る」に似たテイストで親族だからこその複雑な恨みでじっくり引き込んで最後に予想してなかった方向に...そっちに行くとは思わなかったわ。タイトルにもなっている「蔵の中」を筆頭に耽美で狂った香りの漂う作品集。推理小説ではないけど横溝先生ならではのトリックで引き込まれる。Kindle Unlimitedでなんとなく手に取って読んでみたんだけど当たりでした。2024/05/01
あいあい
8
若い頃に読んだものを再読。記憶の中では耽美的な幻想小説のように思っていたが、しっかり探偵小説だった。人間の記憶て曖昧なものですね。探偵小説ではあるが、雰囲気は耽美的で幻想的なうっとりぞくぞくするもの。そしてこの文章の見事さよ。端然としていて柔らかく美しい。時に漢詩や僕でも知らない漢語が混じり、それでも意味は分かる(一応『広辞苑』で調べはした)というもの。現代作家では絶対に書けないような堂々たる達文。お見事。2025/06/03




