内容説明
古典落語の人気演目を本邦初のノベライズ。
直木賞作家で時代小説の第一人者が、「落語の人情世界」を小説化。
夫婦の愛情を温かく描いて、屈指の人情噺として名高い「芝浜」のほか、登場人物がすべて実直な善人で、明るい人情噺として人気の「井戸の茶碗」、船場の商家を舞台にした大ネタ「百年目」、一文無しの絵描きが宿代の代わりに描いた絵から意外な展開となる「抜け雀」、江戸末期の名脇役だった三世仲蔵の自伝的随筆をもとに作られた「中村仲蔵」を収録。
落語ファンからも人気の高い演目を、細部を丁寧に描き込み、ときに独創を加え、ときに人生訓を交え、見事に調理してみせます。
高座芸である落語を小説という形で表現する、新しい試み。
聴いてから読むか、読んでから聴くか。
元ネタを知る人も知らない人も楽しめる、落語小説集です。
※本書は過去に単行本版として配信された『芝浜~落語小説集~』の文庫版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
93
大方のあらすじを知ってはいても、思わず引き込まれます。山本一力氏によって選ばれた演目はどれも味わいの深い噺です。人としての矜持、人の心を思いやる気持ち、要は人としての品格を題材にしたものばかり。元々良くできた噺であるうえに、山本氏の筆で細部が描かれ、伏線が張られたうえ、噺がふくらまされるだけに、読んでいて落語を聴く以上に気持ちが高ぶります。「芝浜」では思わず泣いてしまいました。さすがは一力先生です。2019/03/13
tulip
31
耳から聞いた「芝浜」「井戸の茶碗」はゲラゲラ笑って終わった記憶があったが、小説になったこちらは人情ものの江戸の世界で、しみじみとしたものになっていた。続編があれば読んでみたい。2020/02/05
のんちゃん
26
時代小説の名手山本一力氏による落語噺五作のノベライズ。落語は一席の時間に限りがあり、それ故にその時代や土地、登場人物の背景は詳しく語られない。そこを山本氏は見事に肉付けされたというか、一つ一つの噺を立派な読み物にリメイクされたとの感。私が特に得心した感があるのは、「百年目」。堅物の番頭の遊び人である別の顔の豹変が、落語の噺だとどうもよく分からなかったのだが、この短編で彼の背景が分かり、納得できた。また、別の噺も小説にして頂きたい。一落語ファンとしては寄席と小説、両方で楽しみたいと願っている。2019/04/04
miu
16
落語を読んだ!落語は前々から気になっているものの、なかなか聞きに行けていない。だからまずは読んでみた。演目は『芝浜』『井戸の茶碗』『百年目』『抜け雀』『中村仲蔵』。どれもこれも面白い!興味が深まったところで、つぎはホンモノを聞いてみたい。2019/12/01
ベローチェのひととき
16
山本一力さんが5つの落語を短編で記した短編集。芝浜・井戸の茶碗・百年目・抜け雀・中村仲蔵の5つが収録されている。読み応えがあり、話の背景もよくわかり、なかなか面白かったと思う。解説に書いてあったが、年月を明確にするのは読み物では物語に入り込むのに必要なことというのが納得がいった。しばらく寄席に行ってなかったので、また行きたくなった。2019/04/17
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