岩波新書<br> やさしい日本語 - 多文化共生社会へ

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岩波新書
やさしい日本語 - 多文化共生社会へ

  • 著者名:庵功雄
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2019/01発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004316176

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内容説明

人口減少を背景に,移民受け入れの議論が盛んになっている.受け入れるとしたときに解決しなければならないのがことばの問題.地域社会で共通言語になりうるのは英語でも普通の日本語でもなく〈やさしい日本語〉だけ.移民とその子どもにとどまらず,障害をもつ人,日本語を母語とする人にとって〈やさしい日本語〉がもつ意義とは.

目次

目  次
   まえがき

 第1章 移民と日本
    「移民」「難民」が世界的なニュースに/日本は移民を受け入れるべきか/日本は既に外国人抜きでは成り立たない社会になっている/移民を受け入れるとはどのようなことであるべきか/ 「ことば」から考えてみる/日本における言語的マイノリティーが直面する困難/ 「多文化共生社会」に必要なこと/国際語としての英語、そして、日本語/本章のまとめ
 第2章 〈やさしい日本語〉の誕生
   外国人に対する情報提供──対象者は誰か/英語は共通言語になり得ない/多言語対応の必要性と問題点/阪神・淡路大震災の教訓──災害時の情報提供/災害時から平時へ──〈やさしい日本語〉の誕生/初期日本語教育の公的保障の対象としての〈やさしい日本語〉/地域社会の共通言語としての〈やさしい日本語〉/地域型初級としての〈やさしい日本語〉/ 〈やさしい日本語〉の実践例/nhkの news web easy/公的文書の書き換えと横浜市との協働事業/居場所作りのための〈やさしい日本語〉/本章のまとめ
 第3章 〈やさしい日本語〉の形
    〈やさしい日本語〉が満たすべき条件/学校型日本語教育と地域型日本語教育/ 〈やさしい日本語〉の実相/日本語文の構造(単文)/1機能1形式/本章のまとめ
 第4章 外国にルーツを持つ子どもたちと〈やさしい日本語〉
   移民の受け入れと外国にルーツを持つ子どもたち/タックスペイヤーとセーフティーネット/外国籍の子どもの高校進学率は3割/日常言語だけでは十分ではない/バイパスとしての〈やさしい日本語〉/漢字の問題/多様性を持つ人材として/本章のまとめ
 第5章 障害をもつ人と〈やさしい日本語〉
    「普通」のものには名前がない/だれでも参加できるじゃんけん/ろう児と日本語/ろう児にとっての「母語」の習得/自然言語としての日本手話/音声がなくても言語は習得できるか?/第二言語としての書記日本語の習得/ろう児の日本語教育と〈やさしい日本語〉/同情を超え、競争できる社会を/本章のまとめ
 第6章 日本語母語話者と〈やさしい日本語〉
   接触場面と〈やさしい日本語〉/話しことばの場合/書きことばの場合/日本語母語話者に求められる日本語能力とは何か?/有標なものが隠れた真実をあぶり出す/有標な存在としての「外国人の日本語」/日本語表現の鏡としての〈やさしい日本語〉/本章のまとめ
 第7章 多文化共生社会に必要なこと
    「外国人が増えると犯罪が増える」は本当か?/ 〈やさしい日本語〉でできること/ 「ヒューマニズム」だけでなく/ 「外国人に譲歩する」のではなく/ 「機能」から考える/ 〈やさしい日本語〉は国語教育の問題である/ 〈やさしい日本語〉は日本語教育の問題でもある/重要なのは「お互いさま」の気持ち/ 〈やさしい日本語〉と情報のバリアフリー/本章のまとめ
   あとがき
   付録〈やさしい日本語〉マニュアル
   参考文献
   注

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

68
今後生産人口が減少する日本社会には、移民を含めた多文化共生社会を作ることが必須である。現在日本の外国人数が200万人を越え、外国にルーツを持つ子どもたちが活躍できるようにするためにも、今までの国語教育とは異なり日本語を外国語として捉える日本語教育を考える必要がある。やさしい日本語とは相手の立場に立って理解しやすい言葉を選ぶということであり、日本人にも自分の考えを相手に伝えて相手を説得する能力を磨くことによりメリットが大きい。著者はまた言語に障害がある人への音声を介さない言語の取得は可能であると主張している2020/01/09

shikada

19
日本語を母語としない定住外国人が理解しやすい「やさしい日本語」の重要性を説く一冊。定住外国人は、英語をある程度理解する人よりも日本語をある程度理解する人が多いのは初めて知った。行政が情報発信する悪い日本語の例が具体的で理解しやすい。阪神淡路大震災のときに「容器を持参の上、公園に参集ください」と告知されたが、こんな文章では非漢字圏の外国人は「公園」以外の漢字は理解が難しい。「入れるものをもって公園に集まってください」で十分に意味が通じる。今後外国人が増えるにつれ必要になる考え方だと思う。2021/12/22

さとうしん

18
日本語を母語としない外国人にとって、どのような日本語表記がわかりやすいのかという話から始まり、「やさしい日本語」は外国人だけでなく聴覚障害者などにも求められているという話、更には日本語を母語とするマジョリティにとっても言語運用能力の向上に資するという、意外な話へと展開していく。留学生を対象とした学校型日本語教育とは別に、学習時間を捻出しづらい移民などを対象とした地域型日本語教育のメソッドが必要という話に共感した。2019/12/02

マカロニ マカロン

14
個人の感想です:B。少子化で人口減少が始まった日本の経済活動には移民が不可欠。外国人を厄介な隣人とするのではなく、共に日本社会を作っていくパートナーにする必要がある。その障壁となるのが漢字仮名が複雑な日本語の難解さ。外国にルーツをもつ子どもたちの義務教育化を実現し、将来のタックスペイヤーにしていくことと、「二つの文化を知っている国際人」として評価される社会を作っていくこと。本書のタイトルは「易しい」と「優しい」の二つの意味を込めている。※この感想を「やさしい日本語」にしてみた。コメント欄を参照2021/06/23

ホシ

14
講演で庵先生のお話をうかがった事がある。実に研究者らしい実直なお方で、本書にはそうしたお人柄が滲み出ているようだ。私に全くもって欠けていた知識は「ろう児への日本語教育」これはもう、前提の認識から間違っていた。本当に恥ずかしい。講演で庵先生は「日本語学界に漂う閉塞感」を訴えておられたが、そうした閉塞感を打破したいという、先生の熱い思いが本書からは伝わってきた。また、本書は私への叱咤激励の書。もし、日本に帰る事になったら、私も「やさしい日本語」に携わりたい。参考文献も充実しており、うちら必読の一冊。2017/05/01

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