内容説明
第1句集「ひびき」刊行から10年。「人生の下り坂は山の端に沈む太陽のように転がり落ちて、体力も記憶力も劣化の一途をたどるばかり」の一文ではじまる「あとがき」には最愛の妻との死別が綴られ、一時は川柳から離れたほど埋めきれない著者の孤独が滲み出ている。
いつしか自分をさらけ出し、川柳に吐くことを再開した著者は、一日に一句を思いそれが山となった頃、川柳を通じての他者との響き合いを求め、人生の輝きを取り戻した。「2008年の章」から「2015年の章」までの8年間の魂の軌跡。
幸せにすると確かに言ったはず
晩酌に目刺しと妻のある平和
訳もなく泣いてレモンの味を知り
一歩前照らした妻の常夜灯
さよならをしたのに妻はいつもいる
花の名が知りたくなって墓参り
人生を騙し続けた万華鏡
にんげんに差をつけたまま日が暮れる
真ん中に母さんがいて丸くなり
夕やけの色になりたいだけである
目次
2008年の章
引き際の花
適材適所
残 火
道 標
液状の地盤
落日の影
裸 眼
動物川柳・猫
2009年の章
老母の言
あの雲
明日へ
一日だけの共和国
鶴彬生誕100年記念句会
漫歩する余生
百句繚乱
川柳句集「百色」
山陰の旅(平成21年7月8日~11日)
鳥取砂丘にて
姫路城にて
2010年の章
一葉の街で
嫁ぐ日に
警官のさくら
子供から母へ
虚の平和
ミイラ作った夏
2011年の章
答えのない方程式
母星の基地
津 波
もう一人の自分
星祭り
2012年の章
文明と贅
ときめいて
2013年の章
それぞれの春
ピーポーの音
つまずいた石
夕やけの鬼
生きたい
さよならのあとで
慕 情
追 憶
2014年の章
思い出連れて
長生きの罪
嫉妬心
2015年の章
鼻 薬
あとがき
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