内容説明
ノアの方舟、バベルの塔、出エジプト……旧約聖書の有名な物語の数々。それは本当に起こったことなのか? それともたんなるフィクションに過ぎないのか? 最新の考古学的知見を用いながらひとつひとつ明らかにする。旧約聖書の物語がこれ一冊でわかる!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
58
果たして史実か。ひとつの民族が長い歳月をかけて伝承してきた物語には、さまざまなヴァリエーションが生まれるし、お互いに矛盾も生じる。「出エジプト」という事件も、世界史の教科書に取り上げられているにもかかわらず、史実である証拠は何も見つかっていないという。中国の場合もそうだが、古代から伝えられた書物を歴史研究に使うには、非常に慎重な態度が必要だと感じた。2019/01/05
rosetta
23
大学生の時に宗教学のレポートで聖書のリアリティについて論じるというテーマがあった。他の専攻の学生は出エジプト記の海が割れる話を書いた人が多かったようだ。新書だし『謎解き』というタイトルだし理性の本かと思って読んでみたら、全く逆の作者自身の信仰告白の本だった。物語の辻褄を合わせる能力のない古代人が書いたいい加減な本を、都合の悪いところには目をつぶって無理やり意味をこじつけてありがたがると言うのは自分にはできない2025/01/04
trazom
22
ヤングアダルト向けの「ちくまプリマ―新書」で、どんな謎解きが行われるのかと興味を持って手にした。対象は「アダムとイブ」「ノアの方舟」「バベルの塔」「出エジプト」「ダビデとゴリアテ」という旧約聖書の定番。旧約聖書は、複数の異なった伝承物語を集めて編まれたものであるから、多くの矛盾に満ちていることが、具体例を挙げて説明されている。殆どが、周知の内容で目新しさはないが、ただ、登場人物の武装を細かく並べ上げるゴリアテの描写が、平家物語の「敦盛の最期」の描写と同じだという著者の指摘は、新鮮だった。2019/02/08
bapaksejahtera
11
高校生向けに旧約聖書の様々を考古学を始めとする歴史学的知見から説いた本で、優しい文体で書かれている。ユダヤ教史等について些かの読書歴があるので既知の事項が多く通読を迷ったが、創世記や出エジプト記などに絞って、その記載の類似事項の頻出とその間の矛盾等、歴史学の成果を基に推測を加えて飽きさせなかった。こういう本を50数年前に読んでいればと思った。但しモーゼとエジプトなど幾つか論じて欲しかった事項も多い。著者の中公新書を読んだほうが良かったのだろうが、秦剛平氏のキリスト教論の方が皮肉が多く、私の好みではある。2021/10/05
Minamihama
11
「出エジプト記」は歴史的事実ではなかった、と言っています。 彼はまた、日本の高校の歴史教科書でさえ、エジプトからのモーセのこの出発を歴史的事実として書いていると言います。 「「出エジプト記」は古代人によって作られた物語である」という事実は最近発見された事実です ヨーロッパ社会においてさえ、聖書が神の言葉を記録した本ではなく、歴史的文書として研究されるまで、出エジプト記は歴史的事実であると信じられていました。 日本では、第二次世界大戦前には、日本の神話は歴史的事実であると人々に教えられていました。2020/02/22