中公新書<br> トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち

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中公新書
トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち

  • 著者名:藤原辰史【著】
  • 価格 ¥946(本体¥860)
  • 中央公論新社(2019/01発売)
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  • ISBN:9784121024510

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内容説明

1892年にアメリカで発明されたトラクターは、直接土を耕す苦役から人類を解放し、穀物の大量生産を可能にした。文明のシンボルともなったトラクターは、アメリカでは量産によって、ソ連・ナチ・ドイツ、中国では国策によって広まり、世界中に普及する。だが、化学肥料の使用、土地の圧縮、多額のローンなど新たな問題を生み出す。本書は、一つの農業用の“機械”が、人類に何をもたらしたのか、日本での特異な発展にも触れながら、農民、国家、社会を通して描く。
●目次
まえがき
第1章 誕 生――二〇世紀初頭、革新主義時代のなかで
   1 トラクターとは何か
   2 蒸気機関の限界、内燃機関の画期
   3 夜明け――J・フローリッチの発明

第2章 トラクター王国アメリカ――量産体制の確立
   1 巨人フォードの進出――シェア77%の獲得
   2 専業メーカーの逆襲――機能性と安定性の進化
   3 農民たちの憧れと憎悪――馬への未練


第3章 革命と戦争の牽引――ソ独英での展開
   1 レーニンの空想、スターリンの実行
   2 「鉄の馬」の革命――ソ連の農民たちの敵意
   3 フォルクストラクター――ナチス・ドイツの構想
   4 二つの世界大戦下のトラクター

第4章 冷戦時代の飛躍と限界――各国の諸相
   1 市場の飽和と巨大化――斜陽のアメリカ
   2 東側諸国での浸透――ソ連、ポーランド、東独、ヴェトナム
   3 「鉄牛」の革命――新中国での展開
   4 開発のなかのトラクター――イタリア、ガーナ、イラン

第5章 日本のトラクター――後進国から先進国へ
   1 黎 明――私営農場での導入、国産化の要請
   2 満洲国の「春の夢」
   3 歩行型開発の悪戦苦闘――藤井康弘と米原清男
   4 機械化・反機械化論争
   5 日本企業の席巻――クボタ、ヤンマー、イセキ、三菱農機
終 章 機械が変えた歴史の土壌

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

なかしー

80
「給食の歴史」の人。 専門は農業史。 中公新書の本書の様な1テーマをとことん深掘する作品が好きすぎる。 「トラクター」を軸に、各国でいつ頃に誕生したのか?どういった企業があるのか?各国同士の型式の違いや文化との繋がりなど幅広い内容を一冊にまとめた作品。 印象に残ったのは、トラクターの前身は戦車だった事。日本は主に水田向けが多く、畑と比べると土質が硬めという特徴がある為日本向けに独自開発されている。2021/12/26

harass

76
内燃機関をつかう農業作業車両、トラクターの各国の歴史と文化を描く新書。読んでいてあっけにとられる情報量と範囲の広さと本の薄さ。20世紀初め米国で発明されたトラクターは牛馬の代わりとして農業の発展に貢献する。二度の世界大戦と戦後それぞれの各国での普及の相違や人々の態度などを小説映画広告など。トラクターも自動車と同じく、日本のメーカーが世界でも高いシェアを誇っているそうだ。小林旭「赤いトラクター」の三番までの歌詞全部が載っているのに絶句。軽い気持ちで借りて、なんかもうすいませんと感じた濃厚な本だった。良書。2018/05/20

Gotoran

60
トラクターを主役にして今までにないユニークな視点で世界史を辿った作品。トラクターの用途、機能・特徴、開発・普及の歴史、その誕生の背景に蒸気機関の農機具への適用・発達があったこと、第一次世界大戦期の戦車の登場の背景にキャタピラー付トラクターの開発があったこと、独ソ戦ではトラクター工場で作られた戦車が活躍したこと、等々、トラクターが人類の歴史をどの様に変えたかについて、政治的、文化的、経済的、生態的側面から考察された著者の思いが感じれらた良書。実に興味深く読むことができた。2018/08/28

skunk_c

51
トラクターとは牽引車のことだが、もちろんこれは農業用のもので、歩行型のいわゆる耕耘機も含んでいる。機械と人間、動物との関係、戦争や社会体制(ソ連のMTSはずいぶん昔に教わったが、思ったよりずっと早く解体していた)、そして日本における様々な工夫と、目配せの効いた記述が多く、個人的には学生時代のゼミの教授のひとりの専門が農業だったので、農作業についても比較的知っていることが多かったこともあり、とにかく面白かった。近現代史をこういう切り口で読み解くのは社会を多面的・立体的に理解するために重要だと思う。お薦め。2017/10/03

Miyoshi Hirotaka

42
AIによりホワイトカラーの働く風景が変わるとされ、その予測に戦々恐々としている。ところが、百年前にトラクターが世界の風景を一変させたことは忘れられがち。これは、AIがもたらそうとしている以上の大変化だったかもしれない。農業の機械化は、国民の職業構造を変え、人口増に伴う食料需要を支えた。トラクタターと戦車の技術的同一性は農民と兵士の機能的同一性をもたらした。旧ソ連では農業集団化を強行する技術的な動機になったが、数千万人の犠牲者が出た。わが国でも農業の合理化に貢献、余剰人員は工業分野へ流出、経済成長を支えた。2018/07/19

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