内容説明
折口信夫の生涯のテーマであった「日本文学の発生論」。日本人の心の始原の言葉とはなにか、文学を押し動かしてきた力とはなにか、を重層的に問い続けた折口の展開を、本『精選Ⅱ』では「貴種流離譚」や「笑いの文学」、「源氏物語論」などの物語史とともにとらえるものである。
感想・レビュー
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マーブル
5
折口信夫。天才か、奇才か。日本文学の流れをその場にいたかのように語る。奔流のように流れていく論考。時には断定的に、時には創造力を逞しく。流れはあちらにぶれ、彼方に跳び、うねりうねって展開する。古代に生まれ神に捧げられた文学の萌芽から、自らの力と技で作為を始める時代を通り抜けて近代まで、日本文学の歴史を一大叙事詩のように語る語り口は、容易く理解や受容を許さない。民族学に抱いていいたイメージの大枠から外れた些末事すら事実のように述べる手法は、生き生きとし、無味乾燥な学問からは感じられないものを与えてくれる。2018/12/19