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内容説明
縄文土器の表面や断面に現れた当時のタネやムシたちの「圧痕」は、いわば「人が作った化石」といえる。土器の製作時に粘土中に練り込まれたコクゾウムシなどの貯蔵食物害虫をはじめとする家屋害虫は、縄文人が定住し、植物を栽培し、それらを貯蔵するようになって自然に集まってきたムシたちであった。従来の方法ではその資料的限界からわからなかった縄文時代の人々の意(衣)食住の実態を、今、この圧痕ムシたちが語り始める――。
1章 コン虫とガイ虫
2章 縄文土器はごきぶりホイホイ
3章 ムシとヒトの歴史――シラミとゴキブリ
4章 ウンチの中から出てくるムシたち
5章 ハエが見ていた人の死――葬送昆虫考古学の世界
6章 殺虫・防虫の考古学
7章 クリを食べたコクゾウムシ
終章 害虫と人の未来
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
28
面白かった!遺跡から発掘される昆虫やその痕跡から推測できる生活や社会の形成過程…いやあ、思いつきませんでした。定住生活が始まったからこそ悩まされる虫がいる。その共生関係が遺跡で見つかる…いえいえ、見つける!その作業の大変さに思いがいきました。2019/03/27
もりやまたけよし
26
遺跡を発掘されて出てくる土器にひっついている虫を研究する本でした。世の中には面白い視点で研究する人がいるものですね。2019/08/12
はちめ
4
日本における実例の紹介は意外と少なく、海外の文献の翻訳引用と思われる部分が多いのは残念。ただ、記紀神話の伊弉諾尊による伊弉冉尊訪問時の描写に関する解釈により、その舞台が九州である可能性を示唆している部分などは極めて興味深い。日本では新しい研究分野みたいなので今後の研究成果に期待したい。☆☆☆★2019/01/30
こまさん
3
昆虫の痕跡から縄文時代の食性、古代の葬送、最後には人と昆虫の付き合いにまで言及。良い本だった。2019/11/14
メイロング
3
「はじめに」だけでおもしろい本だとわかる。昆虫の生態から考古学の新たな視点ができあがる。難しくなりすぎないよう配慮された内容で、おもしろさがダイレクトに伝わってくる。読みながら、こないだ読んでた香りの考古学的研究が防虫面においてリンクできそうと感じる。このリンクの気配はもっとたくさん隠れてるんじゃないかな。土器に埋め込まれた無数のコクゾウムシは、古代呪術・民俗学とリンクできそう。わくわくが止まらない。ハエのウジについては、赤穂市のアースの有吉さんを尋ねればいいのでは(この1つ前に読んでいた本)2019/06/12