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内容説明
明治百五十年でも語られない闇の部分、それが廃仏毀釈だ。実は、興福寺阿修羅像、五重塔も消滅の危機にあったのだ。神社と寺院を分離する政策が、なぜ史上稀な宗教攻撃、文化財破壊にエスカレートしたのか? 鹿児島、松本、伊勢、東京、奈良、京都など日本各地に足を運び、埋もれた歴史を掘り起こす近代史ルポルタージュ。
【目次】
はじめに
第1章 廃仏毀釈のはじまり ──比叡山、水戸
第2章 維新リーダー藩の明暗 ──薩摩、長州
第3章 忖度による廃仏 ──宮崎
第4章 新政府への必死のアピール ──松本、苗木
第5章 閉鎖された島での狂乱 ──隠岐、佐渡
第6章 伊勢神宮と仏教の関係 ──伊勢
第7章 新首都の神仏分離 ──東京
第8章 破壊された古都 ──奈良、京都
結びにかえて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
133
人間の自己確立のために信仰は必要な要素であるが、日本国内でも為政者が強権的に信仰規制してきた。本書は近代日本の政治的信仰規制を解説。1868年の神仏分離令から始まる廃物毀釈を、具体的な各地の例に対し背景と実施を分析しながら紹介。日本信仰の歴史の転換期は仏教の影響は大きい。飛鳥時代の仏教伝来後、国教化政策され、革命的な仏教大衆化が生じ、為政者と仏教権力者との争いを経て、江戸時代には国内統制のため仏教が積極的に活用された。経済停滞期の江戸時代で権力の既得化した仏教勢力に対する明治改革が本書主題。2019/04/07
ナイスネイチャ
129
図書館本。廃仏毀釈という明治政府の悪行とも解釈できる明治初期2~3年で多くの仏像や寺が失われた歴史。ある程度つぶされてもしょうがない寺社があってもいいと思うが、これはやりすぎ。著者は近年も同じく衰退している現状を嘆いていました。2019/03/28
佐島楓
82
廃仏毀釈。日本史の教科書ならさらっと一行で流される事象を、本書では詳しく検証している。明治政府の意図を超えた活動になってしまったという廃仏毀釈。そこにはどのような心理が働いたのか、いくつか答えは出ているものの、地域差もかなりあるようで、もっと周辺の本をいろいろと読んでみたいと思った。寺社仏閣の見方が変わる作品。2019/01/24
さつき
78
廃仏毀釈とは具体的にどんなことが行われたのか知らなかったです。偽金作りや橋の材料に仏具が溶かされ使用されたり、暖を取るために仏像が焚き木として使われたりなど愕然とするエピソードが満載です。一方で、廃寺となった寺院を学校に転用したり、その廃材を使い校舎を建設した事例が多いことには複雑な気持ちになります。新しい価値観でことを始める時には、とかく古いものは切り捨てられる傾向にあるのでしょうけど…当初、新政府側が意図したよりも結果が過激になってしまった理由が、熱しやすく冷めやすい国民性にあるというのも悲しいです。2019/07/15
1959のコールマン
72
☆5。日本史であまり重大視されてない明治の廃仏毀釈。それを知るために最初に読む本としてはベストだろう。廃仏毀釈の背景などは類書に比べるとその比率は少なく、むしろ廃仏毀釈が全国的に波及する過程とか、そして具体的にどんなことが起きたか、を全国にまわって詳しく調査した報告書が中心。なので、事前事後の日本史史上における流れとか、この事件によってどう日本は変ったのか、という事はさっとしか紹介されていない。とはいえ、廃仏毀釈の凄惨さが十分伝わってきて言葉を失う。参考、引用資料が豊富に載せられていてとても役に立つ。2020/01/06