何があってもおかしくない

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何があってもおかしくない

  • ISBN:9784152098207

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内容説明

生まれ育った田舎町を離れて、都会で作家として名をなしたルーシー・バートン。17年ぶりに帰郷することになった彼女と、その周囲の人々を描いた短篇9篇を収録。卓越した短篇集に与えられるストーリー賞を受賞した、ピュリッツァー賞作家ストラウトの最新作!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

はるを

118
🌟🌟🌟🌟☆。歳を取ると余計な邪念が削ぎ落とされていきシンプルな日常が繰り返されていく。でも、時には疲労が蓄積する余りネガティブな感情が流し切れずにあたかもそれが真実だと思い込んでしまう事もある。そして時薬によってそれは所詮は全体の一部に過ぎない事を認知するまで回復している事にも気づく。他人に対して瞬間、瞬間で矛盾する感情を抱く事もある。ストラウトはそんな繊細な部分までも掬い取って、描写していく。分かっちゃいるけれど人生の幸・不幸を他人と比べて測ろうとしてしまう時に俺はストラウトを読む。2020/07/23

kaoru

103
前作『ルーシー・バートン』の主人公の故郷の人々を描く短編集。酪農場を火事で失ったトミー、ベトナム戦争で心に癒しがたい傷を負ったチャーリー、母が20歳年下のイタリア人と再婚したアンジェリーナ。貧しい者は貧しいなりに、成功者はまたそれなりの苦しみを抱えている。成功者として故郷に帰ったルーシーを迎える兄妹の心情もきわめて複雑だ。どのように生きようとも人は故郷での幼年時代から離れることはできない。そこに積もった記憶の堆積が人を作るのだと思う。不倫など道徳にもとる行為も描かれるがそこに至る人の愚かさや哀しさもまた⇒2021/09/07

mii22.

82
田舎の貧困家庭から逃げ出しニューヨークへ出て作家になったルーシーが入院したある時期に疎遠になっていた母親が突然見舞にやって来たとき交わした会話の中に出てきた(前作)過去の記憶のなかの人物の物語で綴られる連作短篇集。どの人物も少し風変わりで問題を抱え順風満帆な人生とは言えない。むしろ苦々しい思いをしている人たちばかりだ。訳者あとがきで私がこんなにもストラウトに惹かれ読むのかが腑に落ちた。悲しみの中にある美しさにはっとさせられるからだ。誰にだって何があってもおかしくないのが人生と言うものね。2019/01/11

南雲吾朗

77
ルーシー・バートンが作家になった後の周囲の人々の変化について書かれている短編集。全ての人々が何かしら繋がって互いに影響を与えてゆく。過去に蟠りがあっても、自分の人生を誠実に生きることで良い方向へ繋がって行く。「風車」のパート(でぶのパティ)が好きである。自分の気持ちを少し変えて周りに接する事で、周囲から徐々に自分本人へ幸福が浸透してくる様なところが心暖まる。良い本でした。2019/06/06

けろりん

73
【第123回海外作品読書会】クライスラービルディングを臨む病室の窓辺で母娘が故郷の人々の噂話に興じた「私の名前はルーシー・バートン」に続く連作短編集。思い出の中の人物の現在がリレーのように各編を繫ぐ。儘ならぬ人生、地方の町の閉塞感、不意に心を乱す過去の軛。歳月を重ねれば、苦い思い出も、懐かしく感じられるというのは絵空事。苦さは、何時までもざらりと舌の上に残る。哀しみは水底からぷかりと浮き上がる。人はその泥濘を這い生きて行く。エリザベス・ストラウトの筆致は容赦がない。透明で嘘がなく、そして悲しいほど優しい。2018/12/15

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