内容説明
応仁の乱末期、若き甲賀忍・三郎兵衛は細川京兆家当主暗殺のため京の今出川屋敷に潜入するが、返り討ちに遭い独りで生還する。10年後、足利第九代将軍義尚が、六角家征伐のため大軍を率いて湖南に陣を敷いた。三郎兵衛改め新蔵人は復仇のため、異父妹のお喬らと夜襲をかけるが、将軍に深手を負わせるにとどまる。手練れの武士に強烈な反撃を受けたためだ。新蔵人はお喬の目の前で爆死。お喬はその死を受け入れられず復讐を誓う!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
107
タイトルの「神遊」とは分身の術らしいです。従来の忍者モノとはひと味違う不思議な読後感が魅力です。応仁の乱末期という時代もマイナーなら、登場する9代将軍義尚、細川、六角などの武将も戦国前夜だけに馴染み薄い小英雄小梟雄ばかり。そんな舞台での甲賀忍者・三雲新蔵人の活躍を描いた忍びエンタメ。中盤、少し読み辛かったですが、以降は忍者モノならではのスリリングな展開とミステリー要素も加わり一気読み。非情と愛情が絡み合い、ラストに向けて高まるボルテージ。あぁ、新蔵人とお喬の命運は…。タイトル効いてますね。良かったです。2019/07/19
巨峰
46
応仁の乱の直後の混沌の時代。近江・伊賀の国を舞台にした歴史伝奇ロマン小説2022/02/14
Kiyoshi Utsugi
30
応仁の乱の末期に起きた長享・延徳の乱を題材にした作品です。 室町幕府九代将軍の足利義尚が近江守護で観音寺城の城主であった六角行高(後の六角高頼)に対する親征の中での出来事になります。 六角氏側につく甲賀忍者の望月三郎兵衛(後に三雲新蔵人と改名)は、細川京兆家の重臣である香西元長に仕える宿敵の藤林半四郎との戦いが、実際の史実とうまく絡めて物語を展開させてました。 異父妹のお喬と新蔵人が一緒になることが出来るのかも読んでいて非常に気になります。😀 舞台となった三雲城、鈎御所跡にも行ってみたくなりました。😀2021/06/04
maito/まいと
18
忍びが史実に刻んだ数少ない足跡、それが足利義尚の死。これを題材に描かれた、それだけで読むべき1冊なのだが、読んでみると展開が独特。序盤こそ敵・味方それぞれの主人公とヒロインの熾烈な戦いとラブストーリーが(まるで裏表のように)進んでいくが、中盤以降は情報と状況の整理を何度もしないといけない何とも不思議な展開。そしてそれまで抱いていた予感が確信に変わる終盤は、何が何やら(笑)忍者モノから一気にサイボーグもの?それともヒューマンストーリー?これまでの忍びモノでは考えられない組み合わせで描かれた意欲作だ。2019/07/09
サケ太
12
これは面白い忍者もの。“神遊観”と呼ばれる分身の術によって生まれる因縁。それが全てを繋ぎ、人間関係を複雑に、そしてあるべき形に導いていく。必要以上に忍術を出さないのも好感が持てる。スピーディーな展開で読みやすくて、スリリング。2018/12/21