内容説明
戦後、侵略主義の別名として否定された「アジア主義」。しかしそこには本来、「アジアの連帯」や「近代の超克」といった思想が込められていたはずだ。アジア主義はどこで変節したのか。気鋭の論客が、宮崎滔天、岡倉天心、西田幾多郎、鈴木大拙、柳宗悦、竹内好らを通して、「思想としてのアジア主義」の可能性を掬い出そうと試みた大著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
22
人脈とかお金の出所とか、実際の行動のトホホさを脇に置くとして。アジア主義が侵略戦争推進の走狗と成り果てていく上で、アジア主義とは原理的に相容れない戦前日本の天皇制との対決が出来なかった事があるのではと感じました。「天皇に導かれたアジア」。植民地支配がヨーロッパのそれと比較して、より美化、正当化されていく事になったのでは。2017/09/27
Haruka Fukuhara
12
意外とそんなに楽しめなかった。文庫にはやはり適切なボリューム、内容というものがあると思う。これはややそれから外れていたのではないかという気がする。2017/10/29
テトロ
7
タイトルだけで敬遠してはいけない書。時代背景、人間関係、哲学など様々な観点から初期アジア主義がどのように帝国主義へ変わっていったのかが600ページにまとめている。米国のパワーが弱まる中、これからの世界を読み解く上で参考になる一冊。2019/09/22
三上 直樹
6
西郷隆盛から石原莞爾に至るまでの近代日本におけるアジアへの見方やかかわり方を、通史的にそれぞれ論じながら、真のアジア主義とは何かを考える一冊。最初の西郷ばかりでなく、江戸時代の朝鮮とのかかわり方からして、ボタンの掛け違いから出発しているだけに、日本の独善的なやり方に陥ってしまうのはいかんともしがたいのが残念ですし、私たちへの宿題だと思います。2017/10/17
ドラマチックガス
4
またまた「本当に読んで欲しい人たちは読まないんだろうなぁ」シリーズ。8月になると戦争の記憶的な特集がたくさんでてくる。いつからか、あの戦争は間違っていなかっただの、西洋の植民地支配からの解放だっただの言い出す人が増えた。この本を読めば、「植民地支配からの解放」と日本の侵略主義が似て非なるものであること、そして、どこから異なるものになってしまっていったのかがわかる。西郷隆盛は実は侵略を企図していなかった、という話と、「天才・石原莞爾」のお粗末なアジア主義とが印象的だった。2017/09/05