内容説明
毎読新聞の記者澱口は、恋人の珠子をベッドに押し倒していた。珠子が笑った。「どうしたのよ、世界の終りがくるわけでもあるまいし」その頃、合衆国大統領は青くなっていた。日本と韓国の基地に原爆が落ちたのだ。大統領はホットラインに手を伸ばした。だが遅かった。原爆はソ連にも落ち、それをアメリカの攻撃と思ったソ連はすでにミサイルを発射していた。ホテルを出た澱口と珠子は、凄まじい混乱を第三京浜に見た。破滅を知った人類のとめどもない暴走が始ったのだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
73
筒井康隆による人類絶滅もの。中国軍内部の殴り合いで誤発射された核から始まる核戦争、そんな中で起きるドタバタ騒動が中心。主人公目線からと各地で起きる騒動の二つの視点から物語は推移するが、圧倒的に面白いのは後者。静謐に最後を迎えるなどという他の絶滅小説に見られるような諦念は欠片も見られず、どの人もどの人も見苦しく他人を押しのけ最後まで生きあがこうとしている。それでもそれが不快でないのは著者の人類観が感じられるからか。でも飛行機のシーンとか南極観測船のシーンとかは往年の著者を彷彿させ、ちょっと嬉しくなるなあ。2023/08/29
塩崎ツトム
21
映画「オッペンハイマー」の最後、オッペンハイマーとアインシュタインの会話を思い出す。「きみは地球大気が発火するかもしれないと言っていたが……」「予想はあたったよ」。キューバ危機の後、米ソ双方の首脳の間にはホットラインが設けられ、インターネット通信網は整備されて世界中の人間とのホットラインが開設されたが、逆にそれは、本書の最初、しょうもない喧嘩の種というか、導火線の本数を徒に増やしただけなんじゃないか?2024/09/12
かっぱ
3
中国のICBMの基地でのドタバタからはじまる戦争は、大国間の相互核攻撃に発展する。冷戦下の破滅戦争なのに、そこに感じられるのは、色濃い戦争の影、それも第二次世界大戦の影だ。 これがかかれた69年は冷戦の終わりの時期で、第三次世界大戦による世界の滅亡は、避けたいけどおそらくは避けられない未来のように思われていた。そんな時代にかかれたこの小説を読むと、スラップスティック・コメディの作家とおもわれていた筒井康隆が、小松左京と同じように戦後焼け跡派だった、という事を改めて考えさせられる。2024/10/21
おすし
1
そんなことでぇ??ってことが引き金になる戦争ってやつ。くだらないきっかけとずさんな管理と人的ミスで核のパイ投げ合戦が始まる。生物的に根本的な“生きる”保障が皆無になったとき、人々はどう行動するか…そんな思考実験。凄惨で残忍で滑稽でムチャクチャな描写…だけど現実の核戦争よりはマイルドな表現なのかもね。現在世界中で核兵器は一万二千発分以上保有されているらしい…。だれかれ構わず皆殺し、偉い人も一般人も大人も子供も動物も虫も植物も地球もあなたもわたしも。そんな無差別大量殺戮兵器がいちまんにせん。2025/08/10
zeroset
1
なんと山陰・今井書店限定で復刊。自分が初めて読んだのは講談社文庫版だった。30数年ぶりの再読。2018/07/29
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