内容説明
――山川登美子は、挽歌を詠むために生まれてきたような歌人だと思う。――その特性を、「三すじの挽歌」に焦点を合わせ、死を見つめ、自らの歌を詠み出す心の軌跡を濃やかに自在に辿る。深い思考が「通念」を超えて、「明星」の歌人・登美子を自立させ、日本の女歌の歴史の中に鮮やかに位置づける。豊かな感性が切り開く、独創的な登美子論。毎日芸術賞受賞作の名著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
303
作家の竹西寛子による歌を軸とした評伝。竹西は山川登美子は「挽歌を詠むために生まれてきたような歌人」だと言う。登美子は、夫を送る挽歌、父を送る挽歌、そして自らを送る挽歌を詠んでいる。「わが柩まもる人なく行く野辺のさびしさ見えつ霞たなびく」ー登美子が亡くなったのは、後三か月で30歳になろうかという春4月だった。その一生に寂しさの付き纏う歌人である。そんな登美子が最も華やかだったのは、やはり「明星」の時代だっただろう。鉄幹がいて、晶子がいて、そして登美子がいた。ただ、鉄幹を中心として、文字通り明星の如く⇒2023/02/04
しゅん
12
与謝野晶子の大きな影に隠れがちな夭逝の歌人、山川登美子。本書は彼女の生の足跡を辿りながら、「明星」の時代を紐解いていく。定められた結婚、与謝野鉄幹への憧憬、夫の死、父の死、自らの死。当時の「明星」の影響力や身内事情を演技的に演出するスタイルを知れて良かったし、明治の文学の有り様が伝わるとこにも学びがあった。歌の良し悪しの判断の言葉が感覚的で、もっと理に沿った解説を読みたいと思う。2019/12/17