岩波新書<br> 江戸東京の明治維新

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岩波新書
江戸東京の明治維新

  • 著者名:横山百合子
  • 価格 ¥858(本体¥780)
  • 岩波書店(2018/12発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004317340

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内容説明

維新の激動に飲み込まれた江戸.諸大名の一斉帰国で人口は一挙に半減し,百万都市は瞬く間に衰退へと向かう.横行する浮浪士のテロ,流動化する土地と身分.人心は荒廃し怨嗟の声があふれる.江戸の秩序が解体してゆく東京で,人びとは時代の変化に食らいつき,生き延びる道を求めて必死にもがきつづけた.名も残らぬ小さき人々の明治維新史.

目次

目  次
   はじめに

 第一章 江戸から東京へ
  第一節 大名小路の風景
   江戸切絵図「御曲輪内大名小路」/江戸城登城風景図屏風/腰掛茶屋/賑わう内桜田門
  第二節 戦略的な藩邸配置
    「大名小路」藩邸の主/上屋敷、中屋敷、下屋敷の役割/中屋敷の新たな役割
  第三節 江戸の占領統治
   薩摩藩邸浪士の御用盗み/江戸城開城直後の情勢/東京様お酒頂戴/東京城吹上苑拝観
  第四節 荒廃する武家地
   激減する人口/焦る江戸藩邸/帰るに帰れぬ藩士たち
  第五節 新しい屋敷主たち
   公家たちの登場/変貌する大名小路/ 「東京十二景 内桜田」の光景
 第二章 東京の旧幕臣たち
  第一節 新政府の悩み
   困難な治安回復/脱籍浮浪士問題/東京の戸籍編成
  第二節 身分の再編という矛盾
   身分制度と新政府/近世の身分とは何か/身分制の解体を考える視点/身分制の再編/明治二年兵制論争/奇兵隊の反乱
  第三節 旧幕臣本多元治の明治維新
   困窮する旧幕臣たち/朝臣化旧幕臣 本多元治/土地経営で生計をたてる/土地の引替/混迷する武家地政策/土地獲得の欲望/本所一つ目という場/一つの人民に二つの触頭
 第三章 町中に生きる
  第一節 家守たちの町中
   東京府知事の江戸学事始め/二つの役割を負う家守/家守の株化/その日稼ぎの人びと
  第二節 明治の人返し
   四ッ谷伝馬町新一丁目の場合/天皇の食費も削減を/一万人の「物貰いの者」/ 「家守の町中」の否定
  第三節 路上の明治維新
   床店とは/なぜ路上で店を開けたか/神田柳原土手通り床店/床所持主と床商人/床商人の地税上納運動/床店のゆくえ
 第四章 遊廓の明治維新
  第一節 新吉原遊廓と江戸の社会
   東京府知事大久保一翁の伺い書/新吉原遊女町の役と特権/動揺する幕末の遊廓
  第二節 遊廓を支える金融と人身売買
   仏光寺名目金貸付/財としての遊女/商品としての遊女の身体/明治五年芸娼妓解放令
  第三節 遊女いやだ──遊女かしくの闘い
   竹次郎一件/稚拙な結婚嘆願書/政五郎の対応策/菊次郎一件/かしくの願い
  第四節 変容するまなざし
   下層社会を生きる矜持/崩壊する遊廓秩序/ 「自由意思」の売春/隠売女から淫売女へ
 第五章 屠場をめぐる人びと
  第一節 弾左衛門支配の終焉
   関八州えた頭 弾左衛門/弾左衛門支配/賤民廃止令
  第二節 牛肉産業のはじまり
   牛肉需要の急増/官許屠牛改会社の設置/仲間の論理による会社運営/身分の論理による関係/警視庁による介入/屠場の払下げ
  第三節 三味線皮渡世小林健次郎の挑戦
   旧賤民のネットワーク/経営者のひとりとして/木村荘平の後押し/身分制の論理をこえて
  第四節 いろは大王と自由民権
   政府との癒着/屠牛商人との闘い/明治一四年、警視庁との対決/営業の自由を求めて/政商から一自営業者へ
   おわりに
   文献解題
   あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

71
明治維新直後の人工流出に治安の悪化と、これまであまり読んだことのなかった東京の混乱がリアルに感じられて興味深かった。遊女や被差別民に対しての記述も意義深い。新政府の上からの西洋ナイズされた政策が、果たして民衆に幸せをもたらすものだったのか。疑問を投げかけている。2018/08/28

HANA

58
江戸が東京になる時、武士や遊女、賤民といった市井の人々は如何に変化したか、またそれに順応しようとしたかを追った一冊。題名からだと江戸の牧歌的な暮らしから明治の効率を追い求める生活への変化かと予想しつつ読むが、実際は身分制の解体とその波及についてが中心となっている。故に床店や遊郭といった今まであまり知る事の無かった事への記述も多く参考になる事多し。維新のどさくさに紛れて土地を一等地へと交換しようとしたり官に振り回されながらも権利を守ろうとしたり、変化に追われながらも逞しく生きる庶民の姿もまた印象的であった。2018/11/04

fwhd8325

53
明治維新から150年です。まだ、150年なんです。子供の頃、さすがに維新を経験した人はいなかったけれど、まだ、江戸時代の空気を知っているような年寄りはたくさんいらっしゃいました。大きな歴史の転換点だと思いますが、当時のいわゆる平民の方は「えらいこっちゃ」とはあまり感じていなかったのではないのかと想像します。身分階級から屠場を巡る世界。民俗的な視点の明治維新は新鮮でした。2018/11/21

ホークス

40
明治維新という大断層に、江戸の人たちはどう対処したのか。武士の転出で人口は30%減。消費層が抜けて不景気の嵐。方針が転々とする中、大名も庶民も日々対策に追われる。江戸時代は、負わせた役割に応じて種々の権限を集団に与える丸投げ方式が行き渡っていた(裁判権まで)。今も健在な空気と忖度のフレームの、本来の目的が分かる。「遊廓の明治維新」では、一人の遊女が自由を求めて立ち向かった痕跡を追う。阻むやり口の汚なさに気分が悪くなった。「屠場をめぐる人びと」では、差別が日本的な集団丸投げとどう連結しているかが見える。2019/08/24

venturingbeyond

36
書名通りの近世都市・江戸が、近代日本の首都・東京に生まれ変わる移行期に、渦中にあった市井の人々が、激動の時代をどのように生き、社会の基底的な構造変化にどのように対応していったのかを描く社会史の名著。まずは、政治都市・江戸の中心に存在していた武士の人口が急減し、都市経済が収縮してしまったという点は、指摘されればなるほど当たり前とは思うものの、これまでそのインパクトの大きさを前提に、明治初期の首都行政の困難を考えてみることはなかったので、ここを確認できることのみでも、一読の価値があると思います。2022/12/01

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