内容説明
発達障害の概念は、精神医学のパラダイムを覆すほどの影響をもたらし、発達障害や、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)に関する研究は、精神病理学の中でも大きな柱をなす重要な領域となっている。
発達障害の概念が精神医学に与えた大きな影響を目の当たりにした精神科医や児童精神科医や心理学者など総勢18人が、2018年3月、相互討論ワークショップを行った。
本書には、そこでの徹底した議論を踏まえ書き下ろされた9編の論考が収められている。単にひとつの疾患概念の出現ということを超え,精神医学のパラダイムに深甚な影響をもたらした「発達障害」の精神世界を探究する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
90
精神医学というのは曖昧で、第三者にも分かるような診断基準がない。精神病理学というのは更に曖昧で、診断基準に振り回されず病の本質を掴んで診立てろという職人技を極める学問だが、私はこの、対象の奥深く潜っていく感覚が好きだ。我々は統合失調症を定義しきれないままASDを定義しようとしており、どこまでを裾野とするかは医師による幅が大きい。しかし、内海健先生の文章は益々美しく、大変な症例を多く診ながら、強い興味を持って診療に当たっている福本修先生。一緒にこんな患者さん診たよね。やっぱりこの仕事好きだな。 2021/11/22
ひろか
9
久しぶりに感じた難書。ある程度ベースの知識がないときつい。2018/10/10
PukaPuka
3
ASDについての診断基準や成書を読んでも今ひとつな向きには、内容豊かな本で、ASDの理解が進む。2019/10/23
Asakura Arata
3
精神病理を趣味とする先生が編んだ本。その中に児童精神科の先生の文があったので買ったが、精神病理学というのは相変わらずだなあ。相変わらずラカンとかウィトゲンシュタインとかの難解文の引用が出てくる。病態をわかろうとする気持ちが強ければ強いほど、臨床と乖離してして行ってしまい、思考の遊びにすぎなくなっていることに未だに気づかない。2018/10/27