内容説明
院長のガラが悪いことを除けば、患者に優しく評判の良い病院「ウサミ医院」。 そのもう一つの顔は、患者の「心」を治すべく「絵本」を処方する「絵本処方院ウサミ」。夜だけ開院する絵本処方院には、噂を聞きつけた人が様々な悩みを抱えてやってくる。居候件バイトをするハメになった森野ありすは、「絵本処方院」の仕事にまきこまれるのだが……。言葉の優しさと人の温かさに思わず涙こぼれる連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aquamarine
85
ウサミ小児科は、夜になると絵本処方院へと変わります。母と死に別れ院長に引き取られた高校生のありすが、研修医として患者と関わる連作短編。患者の抱えている問題は決して軽いものではなく、とにかくハラハラしっぱなしでした。処方される絵本の数々は、戦中戦後から長く愛されてきたもの、最近出版されたばかりのものまで様々ですが、どれも実際に刊行されたもの。自分で読んだり、子供に読み聞かせたり、読み手としてもそれぞれの絵本に思い入れがあり、懐かしい思い出も引っ張り出され、処方された患者同様に私の心も温かくしてくれました。2019/01/20
佐島楓
57
キャラクターがポップで面白い。絵本を処方する医院という設定もオリジナリティがある。なぜ院長はヤンキーなのに絵本ヲタクになってしまったのか、そのきっかけを知りたくなった。2018/11/07
ユメ
46
ヤンキーにしか見えない院長が経営する「ウサミ医院」には、知られざるもうひとつの顔がある。夜のあいだだけ、患者の心を癒す絵本を処方する「絵本処方院ウサミ」に転身するのだ。院長は「絵本は万人万病を救う万能薬だ!」と患者に合わせて絵本を選書し、読むべきシチュエーションまで事細かに指示を出す。本は読まないという大人でも、子どもの頃に絵本を読んだという人は多いはず。今は読んだことさえ忘れてしまっているような絵本が、自分という人間を構成する要素になっていることだってあるだろう。絵本は、心の奥の柔らかな部分に届くのだ。2018/11/25
キラ@道北民
39
「ウサミ医院」と夜だけ開院する「絵本処方院ウサミ」で働く昭和ヤンキー風院長と居候兼バイトのありすの連作短篇集。お年寄りから子供まで、その風貌に関わらず大人気の院長のキャラが面白い。そして、処方する絵本の読み込み方もいい。『子供の頃に読んだ絵本は、予防接種と同じ。免疫力に姿を変えて、いつまでも読み手を守り続ける』絵本に触れた記憶は、誰かとの優しい思い出。心が温まる物語だった。作者は児童文学を勉強してきたのかと調べてみたら、情報はまだ無く本作がデビュー作。今後が楽しみな作家さん見つけた!2019/01/23
はるき
27
いい意味で「真夜中のパン屋シリーズ」を彷彿とさせます。こんぐらがった人間関係を絵本で紐解く。若干の説教臭さは院長のキャラで帳消し。面白かったので続編を希望。2019/07/15