内容説明
1929年、再びパリから戻った詩人は、三つめの戯曲『風呂』を完成する。翌30年1月レニングラード初演、3月モスクワ初演。スターリンを思わせる高級官僚が登場するこの諷刺劇は、始め中傷を受け、やがて黙殺され、4月14日の詩人の死を準備する……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Y2K☮
31
今月のポエム、のような戯曲。時間を思いのままに操れる機械。せっかく夢のような発明を目の当たりにしても、硬直化した全体主義のお役所仕事だから一向に話が進まない。詩人として国を動かすことへの限界を揶揄するくだりもあり、体制や自身への失望が垣間見えた。とはいえ今作を出して間もなく著者は謎の死に至るわけで、そのエピソードが図らずも彼の作品には侮れない訴求力があるという事実を証明したのではないか。口紅を塗っただけでクビになった女性の話を聞いたら、私でもああいうリアクションになる。夢想家は不要? その思想がもう夢想。2019/05/21
イシザル
9
生産性のないものは、認めない 100年前のソ連の政治家と、自分が表現できるもので闘ってるのが伝わってくる。昨今の日本でも気持ち悪い。表裏一体とはよくいったもので。2018/08/06
保山ひャン
2
1929年のマヤコフスキーによる喜劇。サーカスと花火のある六幕のドラマと題され、ウエルズばりの時間移動機械の発明などが描かれるが、官僚主義に阻まれて物事がスムーズに運ばないドタバタ。当時の全体主義体制への強烈な批判であり、観客も笑えず、しばらく後にはマヤコフスキーが謎の死を遂げるに至る。未来から来た人が当時起こっていた理不尽な事柄を理解できなかったり、新聞記者を「ソビエト政権があらわれれば、それに同伴し、あたしたちがあらわれれば、あたしたちの味方になり、敵が来れば姿を消す、神出鬼没の方」と紹介したり。2018/04/01
葛
1
ヴラジーミル・マヤコフスキー著 小笠原豊樹訳 2017年3月16日初版第1刷印刷 2017年4月14日初版第1刷発行 発行者:豊田剛 発行所:合同会社土曜社 用紙:竹尾 印刷:精興社 製本:加藤製本2020/02/13