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内容説明
かつて『怖い俳句』で「俳句が世界最恐の文芸形式だ」と書いた。なのに俳句より怖さで劣る『怖い短歌』を編むのかという声が聞こえる。たしかに瞬間、思わずぞくっとする感じでは俳句にかなわないかもしれないが、言葉数が多くより構築的な短歌ならではの怖さが如実にある。総収録短歌593首(見出しの短歌136首)を、「怖ろしい風景」「向こうから来るもの」「死の影」「変容する世界」「日常に潜むもの」など9つの章で構成し、「怖さ」という見えない塔をぐるぐると逍遥【ルビ:しようよう】(そぞろ歩き)するかのような奇想の著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
64
『怖い俳句』に続いて今度は短歌。俳句はその短さからか語られない背後の闇を想像させるものが多かったのに比して、短歌はそれなりに具体的な状況説明が出来ているのが特徴。言わば俳句が怪談なのに対して、短歌はホラーと言ったところか。また妙に抽象的なものがあったりして、こちらはよくわからない物も多し。様々な恐怖が多数収録されているが、個人的に気に入ったのは夢野久作。猟奇歌何度読んだかわからないけど、こう抜粋されていると全て読み返したくなるなあ。ただやはり紹介はいいのだが、コメントが取ってつけたようになってる気も…。2018/12/30
sin
61
『怖い俳句』を見過ごしていたのは〈編〉の一文字が記されていなかったから…倉阪の俳句には興味がないとばかりに高を括っていたが、いま読み友の好きに興じて手に取った『怖い短歌』に早合点な自分を知った。アンソロジーとして汗を流して選別し、頭を搾った解説付きで、こんなにも闇の濃さ、解釈の拡がりを備えた作品を提供していただけるとは、一度は出逢うことを見合わせてしまった嬉しい切り口の表現との邂逅に喜びしきりです。2022/08/27
☆よいこ
61
1:恐ろしい風景 2:猟奇歌とその系譜 3:向こうから来るもの 4:死の影 5:内なる反逆者 6:負の情念 7:変容する世界 8:奇想の恐怖 9:日常に潜むもの▽恐怖短歌を集めたアンソロジー。しみじみと怖い。ジャンル分けも文句なしにいい。これは買います。手元に置いて何度も堪能したい1冊。2019/03/22
あたびー
41
研ぎ澄まされ、選びに選ばれた言葉を用いて絢爛たる恐怖を織りなす、げに俳句・短歌に勝るものなしとお見受けした。眼前に分かりやすく繰り広げられるものあり、何が何やらわからないのに脊髄の凍るような目に合わされるものあり、一つ一つが名画のように提示されている。「ぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわれてしまったぼくたちはこわ」中澤系「うしろあるきにやってくるのはたぶん死んだはずのおまへさんでせうね」武藤雅治「ひら仮名は凄まじきかなはははははははははははは母死んだ」仙波龍英。ほんとにひらがなこわい。2021/08/06
だいだい(橙)
36
面白かった。私は幽霊や化け物の類は一切信じないので、途中までは「怖い」よりむしろ歌人たちの想像力のすごさに思わず笑った。しかし、第5章「内なる反逆者」あたりから本当に怖くなってくる。自分にとって怖いのは、自分が病むこと、そして人間そのものなのだな、とつくづく思った。そして著者が「電圧が高い」と呼ぶ男性歌人が、岡井隆、塚本邦雄、佐佐木幸綱の三歌人。笑った。「ハイテンションの女王」与謝野晶子、という穂村さんの命名に通じる感じ。一方で夭折した不幸な歌人も男性に多い。20代、30代なんて若すぎて、涙。2021/09/09