内容説明
「俺が死んでも讃える追悼記など書くな」という父・阿川弘之の遺言に、「お父ちゃんがいかに無茶苦茶な人であったか。周囲がどれほどひどい目に遭わされたか。思い出すかぎり、精根込めて書いてみる」とエッセイストの娘が綴る、前代未聞の追悼記。
94歳で大往生した破天荒な父の「強父語録」を挙げてみると──。
・老人ホームに入れたら自殺してやる!
・のたれ死のうが女郎屋に行こうが勝手にしろ
・勉強なんかするな。学校へ行くな
・結論から言え、結論から
・今後、誕生日会を禁止する!
・大学でサムシングを学んでこい
・戦後教育が悪いからバカが育つ
・お前の名前はお墓から取った
・知ったかぶりをした文章を書くな
・朝日の手先になりやがって
・お前は俺にそっくりだ
あまりの暴言に震え、時折のユーモアに笑いつつ、いつしか父と娘の不思議な情愛に胸が熱くなる。
解説・倉本聰
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
72
おそらく、御父上はご家族に甘えていらっしゃったのでしょうね。その程度がちょっと……とは思いましたが。佐和子さんもそのあたりは感じ取っていらっしゃったのでしょう。でなければ私だったらグレますよ……。ご自身ももちろんですが、素晴らしい才能を遺してくださって感謝いたします。2018/12/05
松下左京
48
一言で言おう……下手なギャグ漫画よりよっぽど笑えて、阿川弘之なりの、「本気」の愛情がひしひしと伝わってくる本だった。一言ではないよな(笑)2019/03/26
あや
14
単行本でも読みましたが、文庫版あとがきと解説の倉本聰さんの文章読みたさに文庫も買いました。読んで大笑い。それだけを読むためにお金を出す価値があると思うくらい阿川佐和子さんのファンです。私はファザコンなのでどんなに怖いお父様でも尊敬してしまう。そもそもこの本は死後良いエピソードなど書いてはならぬというお父様の遺言により悪いエピソード列挙本になっているのでお父様の良い面は想像で読者は補って読むべき本である。阿川佐和子さんのお幸せなご結婚生活をお祈り申し上げる次第であります。2020/03/07
駄目男
12
これは典型的な亭主関白の話だ。良くも悪くも今や絶滅危惧種。現在なら三行半を叩き付けられそうだ。ただ、私には解らないことがある。こういう父親の元で育つのは幸か不幸か。如何にも真面目そうな佐和子氏を見ていると、「女はバカだ」という阿川氏の概念は的外れではなかったか。泣いてばかりいた佐和子氏は、今や立派な文筆家。然し、阿川氏の師匠、志賀直哉なこんなことを言っている。奥さんから、「うちの娘も年頃ですから、誰かいい人がいたら紹介して下さい」と言われると、奥から志賀さんが出て来て「君みたいな人じゃない方がいい」。 2020/03/24
ゆう
10
読めば読むほど自分の父に似ていて、他人とは思えなかった。 愛情が無い訳じゃなく不器用で、家族に甘えているからつい思った事がそのまま出てしまう。 内弁慶なのだろう。 人間みんな平等に年を取る。 横暴で頑固だった父もやがて衰え、寿命を迎える。その時はわからなかった事が、徐々にわかるようになるのは、亡くなって何年も経ってからかもしれない。2023/04/23