内容説明
農業経済学者がロシア革命直後に描いた未来社会小説。スターリン下の全体主義社会への道行きとは正反対の小農経営に立つ1984年の世界。だが逆ユートピアの苦みが混じる。巻末論文=藤原辰史
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ex libris 毒餃子
4
ロシア革命が工業改革ではなく農業改革に向かったら、というユートピア小説。ソ連批判小説特有のスターリズム批判はなく、小農経済が発展したらこうなる、みたいな雰囲気漂う。スターリンが食物の強制徴発をやって小農体制をなくしていった過程をかんがみると趣深い。ソチ五輪を記念して読みました。2014/03/08
綾野理瀬(Ayano Lise)
3
農学者チャヤーノフによる農民ユートピア小説。1921年にソヴィエト革命が勝利して、全世界が社会主義化した。日本は天皇制社会主義化している。チャヤーノは新しいユートピアとして、農民ユートピアを描いたのである。ドイツは20年代そのままで、チャヤーノフのドイツを見る目が面白い。訳文も読みやすく、藤原辰史氏の解説も面白いが、ソ連史と農業史をさらに勉強すればより楽しめると思う。オーウェルと違った1984年。ただし、終わり方はユートピアとは程遠いのが印象的。2016/02/05
🍭
2
983(ロシア・ソビエト文学>小説、物語)県立図書館本。平凡社2013年6月10日発行(訳書は1984年晶文社:原書は1920年)。本編よりも本書付録の論考が面白かった。そんなことある?? チューネン√ap「(aは労働者家族の年間経費、pは年間労働生産物を指す。それらを乗じたものの平方根)労働者の必要な消費(特に教育費)を念頭において賃金が確定されるべきだという理想を語っているのである。」直接引用部は215頁(藤原辰史、pp. 195-227)。久しぶりに人文思想系テキスト読みたくなった。労賃論『孤立国』2025/03/30
のうみそしる
1
諧謔と皮肉に満ちた未来旅行記。章のタイトルがあけすけで面白い。日本と中国は政治的に急速に君主制に戻ったが、国民経済においては独自の社会主義形態を取り続けた。ほぼその通りです。すごいよアルチャーノフ。こんな熱狂赤色時代によく書けたもんだ。恋愛の出てこない小説はからしをつけない脂身みたいなものだとする点で筆者がアナトール・フランスと見解を完全に同じくする。2025/02/26
maqiso
1
主人公の知識や展開や章名でユートピア旅行記のパロディ感が強くて面白い。ユートピアの制度が微妙なのが本気なのかパロディだからなのか判断できないが。2020/11/18