内容説明
リップマン『世論』、サイード『イスラム報道』、山本七平『「空気」の研究』、オーウェル『一九八四年』の4作品をとりあげ、「偏見」や「思い込み」「ステレオタイプ」の存在に光を当てるとともに、いま私たちがとるべきメディアへの態度について考える。
はじめに メディアの「限界」と「可能性」に迫る
第1章 リップマン『世論』 堤 未果──プロパガンダの源流
第2章 サイード『イスラム報道』 中島岳志──ステレオタイプからの脱却
第3章 山本七平『「空気」の研究』 大澤真幸──「忖度」の温床
第4章 オーウェル『一九八四年』 高橋源一郎──リアルな「未来」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
72
山本七平氏の『「空気」の研究』によると、日本人は「絶対的命題」を相対的に見られない国民性を持っているが、キリスト教など一神教を信仰する人々は神以外のものを絶対的だとみなさないため相対的に見ることができるとあるようだ。しかし欧米人も苛烈なジェノサイドを行った歴史的事実があるし、プロパガンダに引っかかりやすいのは大多数の人間も同じなのである。このあたりの問題はどう考えればよいのか。人間というものは基本的に単純思考の生物なのか。何か信仰で解決できない部分が過大にあるように思われてならない。2018/11/06
きみたけ
60
NHKのテレビ番組「100分deメディア論」をもとに、メディア業界の信頼が足元から揺らいでいる中、メディアの「限界」と「可能性」について迫った一冊。テレビや新聞だけでなくネット情報も含めて、世の中にあふれる玉石混交の情報に対し、制作サイドの伝えたい「視点」「バイアス」を見抜く力が必要と説きます。「世論」「イスラム報道」「空気の研究」「一九八四年」の4つの名著から、そうした「視点」「バイアス」の仕組みや有効策について解説。個人的にはディストピア小説「一九八四年」の近未来を描いた内容に興味を持ちました。2023/09/16
レモン
38
私たち自身がどのような視点やバイアスを持ってメディアやネットの情報に接しているかを考えさせられる。特に日本人特有の「空気」について論じた『「空気」の研究』に興味を持った。戦艦大和の出撃が決定された空気や、身近なものでは会社の会議で最高決定権を持つ人への忖度など、個人の意思に反していても集団になると正反対の決定が下される恐ろしさときたら。『世論』も皮肉なことにナチスドイツが研究し、悪用されてしまった事実が悲しいが、それこそが良書の証なのだろう。『一九八四年』は言わずもがな。未読の3冊すべて読みたくなる。2024/02/03
ゆゆ
30
NHKの「100分deメディア論」という番組より。メディアの限界と可能性に迫るため、リップマン『世論』、サイード『イスラム報道』、山本七平『「空気」の研究』、オーウェル『一九八四年』の4作を4人の論者たちが分析している。おそらく難解であろう作品たちを非常にわかりやすく説いてくれているので、メディアの持つ力について背筋が凍るような感覚を持ちながら読めた。特に怖かったのが『一九八四年』。村上春樹のと読み比べてみたい。本当は、いろいろなことが何者かの力によって方向づけられているのか。それはとてつもなく恐ろしい。2018/12/14
ちゅんさん
23
これは私にとって読むべき本でした。2025/02/11