内容説明
リップマン『世論』、サイード『イスラム報道』、山本七平『「空気」の研究』、オーウェル『一九八四年』の4作品をとりあげ、「偏見」や「思い込み」「ステレオタイプ」の存在に光を当てるとともに、いま私たちがとるべきメディアへの態度について考える。
はじめに メディアの「限界」と「可能性」に迫る
第1章 リップマン『世論』 堤 未果──プロパガンダの源流
第2章 サイード『イスラム報道』 中島岳志──ステレオタイプからの脱却
第3章 山本七平『「空気」の研究』 大澤真幸──「忖度」の温床
第4章 オーウェル『一九八四年』 高橋源一郎──リアルな「未来」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
69
山本七平氏の『「空気」の研究』によると、日本人は「絶対的命題」を相対的に見られない国民性を持っているが、キリスト教など一神教を信仰する人々は神以外のものを絶対的だとみなさないため相対的に見ることができるとあるようだ。しかし欧米人も苛烈なジェノサイドを行った歴史的事実があるし、プロパガンダに引っかかりやすいのは大多数の人間も同じなのである。このあたりの問題はどう考えればよいのか。人間というものは基本的に単純思考の生物なのか。何か信仰で解決できない部分が過大にあるように思われてならない。2018/11/06
ゆゆ
29
NHKの「100分deメディア論」という番組より。メディアの限界と可能性に迫るため、リップマン『世論』、サイード『イスラム報道』、山本七平『「空気」の研究』、オーウェル『一九八四年』の4作を4人の論者たちが分析している。おそらく難解であろう作品たちを非常にわかりやすく説いてくれているので、メディアの持つ力について背筋が凍るような感覚を持ちながら読めた。特に怖かったのが『一九八四年』。村上春樹のと読み比べてみたい。本当は、いろいろなことが何者かの力によって方向づけられているのか。それはとてつもなく恐ろしい。2018/12/14
hk
21
①リップマン著「世論」②サイード著「イスラム報道」③山本七平著「空気の研究」④オーウェル著「1984」 この四冊の要約と解釈がつづられた一冊だ。共通項はズバリ「誤誘導」。人々の思考や行動をある方向へと差配するプロバガンダが同意語。そういえば、ここ5年ほど「ミスリード」という言葉が日本国内で頻繁に使われている。このミスリードというカタカナ語は、皮肉にもその本質を覆い隠す「ミスリード」の典型例だ。「誤誘導」と表意文字で表記すれば、その概念は人々に浸透する。だが「ミスリード」ならばその概念自体がやがて消滅する。2019/01/20
ミヒャエル・安吾
11
読書メーターの検索システムが酷すぎて、探すまで時間かかった。タイトル入れて出てこないなんて。 去年やってた100分de名著の特別版の書籍。特に空気の研究は今読むべき本だなと思う。2019/01/04
ゆう
11
100分de名著のムックを初めて購入しました。テレビオンエアを文字起こしした内容を想定していましたが、オンエアよりもテーマがはっきり浮かび上がってくる内容に再構築されていました。ムックの方が分かりやすい。論者たちが互いの発言に触発され合って、テーマがどんどん広がっていくオンエアも刺激的で重層的で面白かったですが、より論点がはっきり理解できるムックも読み応えがあります。そして改めて、「メディアと私たち」、今年このテーマで番組を企画された方たちの誠実さとメディア発信者としての姿勢に、敬意を。2018/11/18