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内容説明
なぜモーツァルトは就活で苦しんだ? ベートーヴェンが「市民」をつくった? ワーグナー「勝利の方程式」とは?
19世紀に質量ともにピークに達したクラシック音楽は、大都市の市民階級という新しい消費者に向けられた最新の文化商品でもあった。誰が注文し、いかにして作られ、どのように演奏され、どこで消費されたか。クラシック音楽を知れば世界史がわかる! といっても過言ではない。最高の音楽とともに、歴史の流れを明快に解き明かす画期的音楽史。
【目次】
序章 クラシックを知れば世界史がわかる
第一章 グレゴリオ聖歌と「神の秩序」
第二章 宗教改革が音楽を変えた
第三章 大都市と巨匠たち
第四章 ベートーヴェンの時代
第五章 ロマン派と新時代の市民
第六章 “怪物”ワーグナーとナショナリズム
第七章 二十世紀音楽と壊れた世界
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つねじろう
65
そうベートーベンは大好き。その理由が判明する本でありました。現在クラッシックと表される音楽の発生と移ろいを大変分かりやすく教えてくれます。それはその時代の主役に翻弄されつつもしぶとく生き抜く音楽家の知恵とか業なんかを感じさせてくれたりします。王侯貴族に始まり産業革命からのブルジョワの台頭から市民がリーダーシップを取る変遷を少し乱暴ながらも模倣という視点で展開するロジックは説得力あります。ベートーベンは3百年後9千キロも離れた東の国で年の終わりに自分の作品が演じられてる事に関しどんな感想を持つだろうか。2018/12/21
Book & Travel
57
中世のグレゴリオ聖歌からバッハ、ベートーヴェン、ワーグナーらを経て20世紀に至るまでのクラシック音楽史。西洋史と絡めながら分かりやすく書かれていて、自分のような歴史好きのにわかクラシックファンに丁度いい。ルネサンスや宗教改革と教会音楽の変化、生前評価されなかったバッハが後に評価される理由、市民の時代に登場したベートーヴェンの大きな変革、等々。教会、王候貴族、市民と変わりゆく音楽の受け手とその社会心理を音楽と絡めた視点は、読み易い文体ながら深く読み応えがあった。正月休みに音楽を聞きながら楽しめた一冊だった。2019/01/03
さきん
42
クラシックが死んだというのか、クラシックが音楽の最前線を引っ張らなくなったのは第一次世界大戦からのような気がする。ワーグナーくらいまでならナショナリズムかグローバリズムかと思想を背負っていたが、大戦は全てを絶望の淵に追い落とした。今は軽音楽が主流で、曲の内容も平穏や愛、恋な内容が多い。本書はそこまでの流れを上手く説明できていると思った。音楽と歴史をつなぐ一冊。2019/03/07
yutaro13
35
音楽の「受け取り手」の変遷に着目した西洋音楽の歴史。神の権威を高める教会音楽に起源を持つクラシック音楽は、王侯貴族がパトロンとなる時代を経て、革命後には市民が聴衆となる。そんな時代の流れをうまく掴んだのがタイトルに出ているベートーヴェン、苦労したのはモーツァルト。紹介されている曲をYouTubeなどで聴きながら読むといいんだろうな。新書らしい大仰なタイトルは好みではないが、平易な内容の雑学本なので私のようなクラシック初心者にも読みやすい。もう少しきちんと歴史を学びたいなら岡田暁生『西洋音楽史』の方が良い。2019/06/06
trazom
35
音楽と世界史という切り口は、流石に、両分野に造詣の深い片山先生が最適任だと思うが、参考文献も出典も示さず、先生のお話を筆記しただけというような安直な本作りは、最近の文春新書を象徴するようで悲しい。ベートーヴェンの本質は、後期の弦楽四重奏曲とピアノソナタにあると思っている私には、ベートーヴェンの内的な葛藤に触れることなくそれらの作品を軽くスルーするのは納得できないし、全体的に、論理が紋切り型で相当乱暴なのは気になるが、新書一冊で音楽と社会の大きな流れを示すためには、ある程度仕方なかったのかもしれない。2019/01/25