内容説明
相手が女性と見るや、講釈を垂れたがる男たち。そんなオヤジたちがどこにでもいること自体が、女性たちが強いられている沈黙、世界の圧倒的な不公正そのものだ。今や辞書にも載っている「マンスプレイニング(manとexplainの合成語)」を世に広め、#MeTooへと続く大きなうねりを準備するきっかけのひとつとなったソルニットの傑作、待望の邦訳!
女性は日々、戦争を経験している。
どんなに頑張っても、話すこともできず、自分のいうことを聞いてもらおうとすることさえ、ままならない。
ここはお前たちの居場所ではない。
男たちは根拠のない自信過剰で、そう女性を沈黙に追い込む。
ソルニット自身がその著者とも知らず、「今年出た、とても重要な本を知っているかね」と話しかけた男。
彼にそんな態度を取らせている背景には、男女のあいだの、世界の深い裂け目がある。
性暴力やドメスティック・バイオレンスは蔓延し、それでいて、加害者の圧倒的割合が男性であることには触れられない。
女性たちの口をつぐませ、ときに死に追いやる暴力の構造をあばき出し、
想像力と言葉を武器に、立ち上がる勇気を与える希望の書。
目次
目次
1 説教したがる男たち
2 長すぎる戦い
3 豪奢なスイートで衝突する世界
4 脅威を称えて
5 グランドマザー・スパイダー
6 ウルフの闇
7 変態に囲まれたカサンドラ
8 #女はみんなそう
9 パンドラの箱と自警団
謝辞
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
162
《自分の言葉に価値がないと思わせられる》《存在を消される》感覚はわかる気がするし、闇を最良の未来として受け入れたウルフへの言及や、語れないことを語るという著者の意思表示は心に響く。一方、《完全で自由な人間として生きられるような空間、そこに女性は入れない》とあるが、私にはそうした空間自体が見えない。それは私が男だからか、日本にいるからか…自分の生きる場の外側を知らないことはもどかしい。グローバルな時代に著者の言葉はますます重みを持つだろう。性についても自分の小さな枠を超えて沢山のことを知っておきたいと思う。2020/03/19
どんぐり
85
アメリカでは、9秒間に一度の頻度で女性が殴られ、毎年8万7千件を超えるレイプが起きているという事実。女性への暴力は、アメリカに限らず、全地球的にあふれている。戦争をしたがるのも、「説教したがる」のも男たちと相場は決まっている。それは万人にとっても問題で、決して許されることではないとソルニットは、〈#女はみんなそう〉など8つの論説で批判する。〈ウルフの闇〉では、ソルニットがニューヨークのチェルシー界隈のアパートの最上階にある部屋でスーザン・ソンタグと会ったときに、湿気た味のするたんぽぽ茶を飲みながら、→2024/02/09
ネギっ子gen
64
【男たちは私に説明/説教したがる。そう、いまでも。どの男も、私が知っていて向こうが知らない事柄について的外れな御説をぶっても、謝罪してくれたことはなかった】女性たちが強いられている屈辱や世界の圧倒的な不公正。そうした女性たちの口を噤むませ死に追いやる暴力の構造を抉り出した書。著者は訴える。<男は自分が何を言っているのかわかっていて、女はそうでない。そう断定的に教えられることは、たとえどんなにささいな会話の一部であっても、この世界の醜さを永続させ、光を奪ってしまう>と。若い女性の方々にぜひ読んでほしい!⇒2023/11/09
星落秋風五丈原
45
いやぁ、自分が思っていたことを的確な言葉で言ってもらうとすかっとしますね。2021/01/09
たかこ
40
#マンスプレイニング 序盤の自分が出版した本について、そうとは知らずに権威的に話をする男性の話が秀逸。エッセイだからと気軽に読み始めたけれど根深かった。女性が人として認められるには…。男性優越主義、セクシズム、女性嫌悪(ミソジニー)、不平等、抑圧…その特効薬が「女性の解放」や「ウーマン・リブ」そして「フェミニズム」。言葉(フレーズ)は「声を持たない者たちに声を与え、力なき者たちに力を与える」ことになっていく。セクハラ、DVだって今では当たり前に存在する言葉になった。先人達が戦ってきてくれたから今がある。2022/08/02