内容説明
現代アートを司るのは、いったい誰なのか?
世界的企業のトップや王族などのスーパーコレクター、暗躍するギャラリスト、資本主義と微妙な距離を保つキュレーター、存在感を失いつつも反撃を試みる理論家、そして新たな世界秩序に挑むアーティストたち……。日本からはなかなか見えてこない、グローバル社会における現代アートの常識(ルール)=本当の姿(リアル)を描きつつ、なぜアートがこのような表現に至ったのか、そしてこれからのアートがどのように変貌してゆくのかを、本書は問う。
さらに、これら現代アートの「動機」をチャート化した「現代アート採点法」によって、「難解」と思われがちなアート作品が目からウロコにわかりはじめるだろう。
アートジャーナリズムの第一人者による、まったく新しい現代アート入門。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
38
ジャーナリスティックな興味から全方位的に書いており、非常に読み易いです。優れた文章だとは全く思いませんが、深層が無い翻訳調で理念的でないのがかえって良いと思います。2章に「あいちトリエンナーレ」と同じような、政治とアートのせめぎあいの例が書いてあります。「あいち」より前に書かれているため、「あいち」とつなげた評価は皆無ですが、それがかえって記事の筆力を増しているようにさえ思えます。これを読むと、「あいち」の作家やキュレーターには彼らなりの文脈があるように理解できますが、それを説明する能力に圧倒的に欠けてお2019/11/11
けいご
29
現代アートと聞いてマルセル・デュシャンやアンディ・ウォーホル、ジャクソン・ポロック等で情報がストップしてしまっている事に気づかされ、そこから現代までのアートの文脈を繋いでくれる貴重な一冊でした★何故社会が現代アートに対してのアレルギー反応が強いのか?また、何故こんなにも現代アートは情報共有されないのか?現代アートの見方とは?がぼんやりでもわかった気がしました。「アートかどうかさえ分からない」ぐらいアートの枠を押し広げ続けるアーティストやキュレーター達が選んだ未来には「形としてのアート」は存在するのかな?2021/12/17
NICKNAME
27
以前に著者がNewsweekネット版に投稿したとても読み応えのある連載を読破し非常に参考になったのだが、この本はその記事をベースに更に幅広く詳細に現代アートを解説している。自分の知識がまだまだ足りないこともあり難しいところもあるが、分かり易く読んでいても飽きなかった。最後にまとめてあるところがとてもありがたかった。この著者のアートに対する知識の量や幅には感嘆するのだが、特に堅苦しくなく理論的に説明してくれているところが素晴らしいと思う。この著者が関わるものは今後読み続けて行きたいです。2018/10/23
阿部義彦
23
いやあ体力、知力を使う読書でした。世界基準の現代アート入門ということで初めの大富豪のスーパーコレクターやキュレイターなんかはピンと来なかったけど、3章クリティックからは俄然興味が出て来ました。最も強い影響力を持った20世紀のアート作品、では2位が「アヴィ二ヨンの娘たち」1位はデュャンの「泉」には納得。日本では会田誠さんをもっと知りたいと思いました。私の好きなチンポムは会田さんの弟子筋だったのか!日本の美術教育の遅れにも嘆かわしく思う。現代美術の主流は映像やインスタレーションなのに未だに絵画バカばかり!嗚呼2018/08/15
funuu
22
「1917年4月マルセル デュシャンが小便器に「R、MUTT」サインをしてニューヨークの独立美術家協会が展示拒否の憂き目にあった。」この件をみずから雑誌で取り上げて話題にしたのが現代アートの特異点となった。狭義のアートワールドはアートマーケットに依存していて、そうマーケットはグローバルアート資本主義に支えられている。アーティスト、キュレーター、批評家、ジャーナリストなどの多くはリベラルもしくは左翼であり、彼ら彼女らはグローバル資本主義を批判するが、実は日々の糧をそこから得て者が少なくない。2018/08/25