内容説明
六〇年安保に火をつけた男の全生涯。
装甲車を乗り越えよ――。その男は国会前に群がった学生たちに咆哮すると、車の上から、警官隊にダイブした。全学連委員長・唐牛健太郎。六〇年安保はこの男の情念が火を付けた。
しかし、500万人の男を熱狂させた「政治の季節」は岸信介政権退陣とともに過ぎ去る。ともに闘った若者たちは社会に戻り、高度経済成長を享受した。
唐牛健太郎だけはヨットスクール経営、居酒屋店主、漁師と職を変え、日本中を漂流した。彼はなぜ、“何者か”になることを拒否したのか。ノンフィクション作家・佐野眞一が北は紋別、南は沖縄まで足を運んだ傑作評伝。
※この作品は過去に単行本版として配信されていた同名タイトル の文庫版となります。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さすらいの雑魚
7
知多市の人がインタビューされてる。憧れのヒーローの関係者が市内に!世間は狭い♪唐牛健太郎の評伝っても令和の御代では唐牛?ダレ?が基本。だけど知る人ぞ知る戦後最大の英雄さん。岸"妖怪"内閣を倒壊させた60年安保闘争を指導した栄光のブント全学連委員長。どんな人かと言うと"ホリエモンのペースで両津勘吉のように生きた石原裕次郎よりカッコいい人"がボクの理解。そんな陽性で虚実入乱れた英雄伝説の主の後半生の人知れぬ孤独と痛みを当代屈指のジャーナリストが執拗な取材で炙りだした単行本を追加取材増補した渾身の文庫版がこれ。2021/03/14
shonborism
4
名前だけは知っていたが、これほどまでにスケールの大きな人物だったとは。しかし、背負わされた十字架は重かったんだろうな。他にもバラバラに知っていた人物が唐牛を中心に繋がっていくさまが凄かった。2018/12/18
Hiroki Abe
2
60年安保闘争の立役者にしてカリスマ、唐牛健太郎のその後を紐解いていくノンフィクション小説。唐牛の人たらしは天性のもので様々な人を魅了し、虜にしていく。唐牛の魅力とはどこなんだろうなと考えてみると生に執着してないところではないのかと思い至る。命など使うときに使わなければ意味がない。何故かこの言葉が頭に浮かんだ。2022/09/08
てっちゃん
2
60年安保の一方の主人公のその後が無茶苦茶面白い。しかし、重いものを背負って生きるっていうのは、しんどかっただろうな。2018/12/17
夏風邪
2
母校の先輩として名前だけは知っていたが、自分にとってはもはや歴史のような存在。たとえ損な役回りになったとしても、己の美学を全うした人間の姿がそこにはあった。後代に生きる我々に響くのはイデオロギーではなく、生きることの矜持である。2018/11/18