内容説明
遠足の日のガム。食べても食べても減らない菓子の初登場は凄かった! ――ニッポンのそこここに貧乏がゴロゴロしていた少年時代の、空腹と食べ物をめぐる連作エッセイ。特異な感覚をもって、虚実ないまぜの語り口で料理した本書は、おかしくせつなく懐かしく、飽食の時代に逆説にみちて、妙にクセになる味の本。空腹はおいしい! 負け惜しみで言うんじゃないけれど…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
東森久利斗
2
”少年とグルメ”、ならぬ”少年と空腹”。食い物の恨みは恐ろしい。空腹こそが美味しさの条件。得られない空腹。飽食の時代へのアンチテーゼ。美味しさの絶対値、評価やランキングの否定、美味しさ以上の美味しさの追求、必要性への疑問。食べること、美味しさの相対性理論。一滴残らず体に浸透するご馳走の底力。片山健の妖しい挿画が最高。2023/01/04
ひるお
0
芸術ユニット「ハイ・レッド・センター」や“超芸術トマソン”、芥川賞作家・尾辻克彦としても活躍した赤瀬川原平の食べ物エッセイ。決して高尚ではなく、あくまで地に足のついた、それこそ俗な内容でありつつも、伊丹十三の文章にも共通するような軽妙洒脱さがある。貧しさや空腹が繰り返し書かれていても、それは変わらない。刺身にとっての醤油の重要性を、イエス・キリストの奇跡に例えるところ、すごい。「ところがそこへ、鮨屋の戸をガラリと開けてイエス・キリストがはいって来たのだ。」なんて、他の誰も書けないと思う。2025/03/02
イワハシ
0
再読2019/09/26