内容説明
ある集団のなかでみんなの意思がうまく反映された決定を下すには、どうすればいいだろうか。特に、各人の考えがバラバラで、にもかかわらずそれらを集約して一つの判断を下さなければいけないとき、望ましいきめ方とはどんなものだろうか。これを探究するのが社会的決定理論という分野である。様々な投票方式が生み出す矛盾から、アローの一般可能性定理、さらにはセンの自由主義のパラドックスやゲーム理論まで、この理論が含みもつ広範な内容をかみ砕いて丁寧に解説。社会的決定における「公正さ」「倫理性」とはどのようなものか検討する。最良の入門書として長年親しまれてきた比類なき名著。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いろは
23
猫町倶楽部の関西アウトプット勉強会の課題本。『本書であつかう問題は「社会的決定」という問題である。人々の「こうしたらいいと思う」という意見を集約して、「どうしたらいいか」をきめるときのきめ方について考えようというわけである。』結局、どんな作品かと言われたら、答えはここにあるのではないだろうか。私には実に難解で、何度も挫折しかけた作品だった。「きめ方」について、数字や数式やグラフ、民主主義、心理学という観点から考察していく。理系の方なら、この作品の面白さは解るのではないかと思う。数字は生きていると実感した。2018/09/06
いろは
21
猫町倶楽部の関西アウトプット勉強会の課題本。難しいので再読した。いわゆる確率論の話。あんなきめ方、こんなきめ方があるという『きめ方』の話題なのだけど、前回までは、数学の面しか見えてなくて、読むのが大変辛かったのだけれども、今回は心理学の面も幅広く見えてきて、再読して良かった。確率論または『きめ方』には、民主主義の要素と心理学の要素と数学の要素が話題になっていて、特に心理学に興味のある私には、感情論のところが面白かった。ただ、数学のところは、やはり、文系の私には実に難解で、理系向きだと思わざるを得なかった。2018/09/13
孤独な読書人
11
理性の限界という本の元ネタにあたる本。投票制度にはどのような投票制度にせよ矛盾があり完全な投票制度は存在しないことを数式等も使用しながら解説したもの。特にハンソンの定理で出てくる「投票者の無名性」という公理が気になった。この公理は1人一票の原則を支える公理だと感じたからだ。そしてこの公理を前提にした1人一票の原則こそが今日のシルバー民主主義といわれる事態において実質的平等を阻害している要因のように感じた。2019/06/22
tamako
10
理解のためにメモを取りながら読んだのでずいぶん時間がかかってしまった。高校以上で習う「倫理」って意味がわからないと思ってた理系の人だけど、すごいな、倫理。ただ、たとえば投票者一名につき候補者一名、プラスの方向にしか投票できない選挙システムとかが全然いけてないことがこんなに昔からわかってたのに変わらない(小選挙区制でむしろ悪化している)のは何なんだろうなあ、なんて思ったり。非常に高度で難解な内容を高校生や大学生に理解できるように丁寧に説明しているところに倫理的な佐伯先生の人柄を感じた。2021/08/11
monado
8
社会的選択理論の入門書だが、かなりつっこんだところまで書いてあるので、理解するには骨が折れる。 後半はむしろ倫理的な側面が色濃く出ており、論理を多角的視点から批判しながら、ある意味で人間性を求めていくところは、著者ならではというところなのだろう。2020/03/01




